昨日の台風、我が家では自転車も倒れず、屋外に置いてある容器類も全く無事だったので「10年に一度と言われてた割にはたいしたことないな。」と思って出かけました。なので帰宅してニュースを見て、被害の大きさに驚きました。亡くなった方のご冥福をお祈り申し上げます。
夕方には土浦の診療所で治療を受けていました。90歳を越える女性の患者さんが看護婦さんと話していました。
昔の霞ヶ浦はとてもきれいで、魚が底を泳ぐのが上から見えていた。今の霞ヶ浦はアオコで汚くて、悲しいから見ないようにしている。堤防のせいだけど、堤防のおかげで洪水にならないし。今日みたいな雨が降ったら、このあたりは屋根まで水が来ていた。
アオコ発生は護岸堤防のせいというのは誤解なのですが、霞ヶ浦周辺の住民には、彼女のように、護岸によって霞ヶ浦の水質は悪くなったけど、おかげで安全になったから仕方ないとの見解が多いのかもしれません。
霞ヶ浦の水質悪化の主因は、他の多くの指定湖沼がそうであるように、流入負荷の増加です。湖で最も問題になっている富栄養化の原因は防災ではないので、湖については住民の安全を守りつつ、環境も保全する道があるはずだと思っています。今回の伊豆大島の災害を受けて土砂災害対策が進められることになると思いますが、それについても防災か環境かの二者択一ではない方向で進むよう願っています。
下記は諫早の防潮堤問題に関連して、岩波の「科学」71(7),921-928に書いた文章です。諫早問題も、オランダのような姿勢で臨んでいれば起こらなかったかもしれません。
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オランダでの事例では、水害で約二千人もの人々が亡くなったことを受けての防潮堤計画であった。しかし貴重な生態系喪失の可能性が明らかになったときに、専門家ではない住民の投票が出した結果は、「防潮堤はつくるべきだが閉鎖型にはしてはいけない。締め切り型にしてはいけないが防潮堤としては十分に機能するものをつくれ」という、当時の世界のどこにも無い技術を要求するものであった。オランダ政府はその途方もない要求を真摯に受け止め、技術開発を始めて遂に完成させたのである。