生態系再生のシンボルはアサザではなくタナゴ

昨日(1月18日)は「第7回全国タナゴサミットin美浦(霞ヶ浦)を拝聴してきました。
タナゴ類は水草帯を住み場所にします。二枚貝に産卵するので、貝が増える環境も維持されねばなりません。餌としての動物プランクトンも必要です。そのうえタナゴ類は地域による変異が大きいのです。このためタナゴ類こそ、地域固有の生態系再生のシンボルとなり得るとの発表がいくつかありました。また実際に、地域ぐるみで固有のタナゴを保全・復活させようとの試みも各地から報告されました。
その一方で霞ヶ浦からは「二枚貝、特にイシガイ類が壊滅的」「タナゴもどんどん減っている」との悲観的な報告が相次ぎました。
このような報告を受けて、懇親会では以下のように自己紹介しました。
つくば市から参加させていただいた山室です。専門は水質ですが、10数年前、小学生だった娘から『お母さん、宍道湖とか霞ヶ浦の水質よくするのは簡単なんだよ。アサザを植えればいいんだよ。』と言われて愕然としました。そんな馬鹿げたことは科学的にあり得ないので、以後、何とかしてこのデマが広まらないように努めて来たのですが、負け続けてきました。結果、今では中学校の理科の教科書に『アサザやヨシを植えれば水質がよくなり、魚や鳥の生息場所になる』と書かれるようになりました。
本日のご発表にあったように、水草は適度に管理しないと、逆に魚が住めなくなってしまいます。植えっぱなしではダメなのです。
もっと悪質なのはNHK教育番組です。ここでは先生向けの指導案に『霞ヶ浦の自然が少しづつもとの姿に近づいてきたのはどうしてでしょう。』『霞ヶ浦周辺の小学生のアサザを植える活動があったから。』と書かれています。
霞ヶ浦の自然は危機的状況にあります。アオコは発生していますし、魚は外来種ばかり。ご報告にあったように、二枚貝が壊滅状態という異様な状況です。このどこがもとの姿なのでしょうか。
私はそもそも、義務教育に、不確定要素が大きい自然再生を持ち込むことには疑問があります。しかし子供達に環境について考えてもらう機会が必要だとの意見ももっともです。だとしたらやはり、みなさまがお考えのように、植物から動物が総合的に健全であって初めて生息できるタナゴこそが、自然再生のシンボルにふさわしいと思います。今の義務教育やマスコミではアサザがシンボルと誤解していますが、みなさまのお力で是非、タナゴをシンボルにしていただけたらと思います。」
まるでアサザ基金・飯島氏の宣伝のような、公共放送としておおいに問題があるNHKの指導書は下記でご覧になれます。明らかな間違いを何度指摘されても2年以上放置している無責任ぶりには、呆れかえります。もう1年埒があかなかったら学会を巻き込んで、専門家による検定もないNHKが義務教育用の指導書を広めている問題点を、大々的に追求していこうと思います。http://www.nhk.or.jp/doutoku/documentary/teacher/2011_003_01_plan.html