日本生態学会は「自然再生ハンドブック」という本で、霞ヶ浦でアサザを植えっぱなしにする事業を紹介しています。同書では宍道湖のヨシ植栽も「宍道湖にふさわしい自然再生」と紹介しています。このヨシ植栽は、科学的根拠が皆無であったことが住民に露呈してきたこともあり、昨年10月で中止になりました。
アサザに関する誤解はかなり以前から、宗教のように全国に広まっています。中学校の理科の教科書に「アサザを植えれば微生物が水を浄化し、魚や鳥の住み場所になる」なんて記載があるほどです。
こんなことを理科で教えられた生徒さん達は、「よい細菌をいれたEM団子による水質浄化」を正しいと信じることでしょう。水質浄化に役立つとしてEM団子が広まってしまった一因は、科学的には自然再生にも水質浄化にもならない霞ヶ浦のアサザ植栽を、批判するどころか本まで出して紹介するような日本生態学会の見識にもあると私は思っています。
最近、EMが政治に進出する動きに対して、生態学関係のMLで疑問を呈する投稿がありました。もしEM団子も含めてEMをおかしいと思うのでしたら、これをきっかけに生態学会が後押ししてきたアサザ植栽の非科学性も、きちんと批判してほしいと思います。
(追伸)
某中学校理科の教科書の問題箇所は下記です。
「近年,汚れてしまった湖や川などをかかえる地域では,水辺の環境を復元しようとする取り組みが見られるようになってきた。たとえば,ヤナギのほか,ヨシやマコモ,アサザなどの水生植物を岸に植えると,波による侵食が抑制され,昆虫や魚類,鳥類などの生息の場となる。また,水生植物の茎や根に付着した微生物が湖水中の有機物を分解し,水を浄化していく 図7 図8」
図7は霞ヶ浦の湖岸に植えられたアサザ、図8は琵琶湖の湖岸に見られるヨシの写真です。
湖や川が汚れたのは流入負荷が増えたからで、本来波当たりが強い、海で言えば干潟のような浄化能力の高い砂地に植物を植えるのは、EM団子を投入するのと同じく有機物負荷を増やすことになります。また有機物を分解する微生物は水中にも湖底・川底にもいて、有機物を分解しています。有機物が多いと、その分解によって酸素が欠乏するから問題になっているのです。このように、わざわざ微生物を増やす必要はないのに投入するのがよいとしている点も、EM団子と同じです。
当該箇所は下記のPDFでご覧になれます。
中学校理科アサザ.pdf
- 作者: 矢原徹一,竹門康弘,松田裕之,西廣淳,日本生態学会
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