宍道湖漁業の課題

昨夜は宍道湖の漁師さん達とお食事して、今後の宍道湖漁業について意見交換しました。
ようやく資源量が増えたシジミですが、関東以北の取引先は十三湖産に奪われてしまったそうです。今後は安定供給を図ると共に、ブランド力の回復が課題です。
例えば産卵を迎えプリプリしておいしい6月頃のシジミを冷凍保存し、常に最高においしいシジミを届けるようにする。冬のシジミは餌も少なく、寒いので深い所に潜っています。漁師さん達は時間をかけて鋤簾をひきずりながら深くまで耕して、痩せたシジミを採っています。ひきずるあいだに傷がつくシジミも多数出ます。数が多くておいしい(すなわち旬)6月にとれた冷凍シジミを売る方が、シジミにとっても漁師さんにとっても消費者にとってもメリットは大きいです。
ここで問題なのは、地元の板前さん達で、冷凍を使ってくれと言ってもいやがるそうです。もっと問題なのは、ハゼやフナといった、宍道湖を代表する食材を使ってくれないこと。会食したお店でも、宍道湖産はシジミ汁だけでした。せっかくフナが旬なのに。。。
シジミだけでなく、テナガエビとかフナとかハゼとかワカサギとかシラウオとかウナギとか、ここに来たからこそ食べられるみたいにすると、観光客も増えるかもしれませんね。」「宍道湖シジミだけの湖では全然なくって、私が学生の頃は、秋には子ども達がコンクリート護岸の上に列をなして座ってゴズ(ハゼ)を釣ってましたし、テトラポットの隙間にはテナガエビがたくさんいました。シジミに目処がついたら、そんな宍道湖に戻したいですね。」「その為には、まず塩分。それに目処がついなら底質や川とのつながりですね。」
漁師さんたちも、たとえば鋤簾でガリガリ掻くことでシジミに傷がつきやすい今の方法を改良して「シジミにやさしい漁」にするなど、いろいろアイディアをお持ちでした。
なんと言っても縄文時代からこの地方で食べ継がれているシジミ、そして北は秋田から南は宮崎まで、一時は全国に種シジミを出していましたから、宍道湖は日本のシジミの故郷です。本舗ヤマトシジミの強みをいかして、必ずや再び日本一のシジミ産地としてのブランド力を取り戻すことと期待しています。
ただし、変な研究者が余計な邪魔をしなければ、です。某地元大学では、今なお、「宍道湖シジミが減ったのは、長い間他産地との遺伝子交流がないからだから、他産地のをいれてハイブリッドを作るべき」なんて主張しているそうです(まさかとは思いますが、学長主導なのだとか)。放流事業が多い水産においてさえ、同種であっても遺伝的に多様性があって、それぞれの風土で適応するなかで固有の遺伝的特性が形成されてきたことが近年では重視されるようになっています。例えば宍道湖はワカサギの南限ですが、宍道湖産ワカサギは網走湖産よりも暑さに強いと言われています。そもそも塩分が上がって一気に増産したことからも、宍道湖ヤマトシジミが減った理由が遺伝子ではないことは明らかです。この状況を見ても非常識なことを言い続けるようなら、この大学も終わりだね、と苦笑していました。