日本の汽水湖に関しては驚くような誤解が一般に広まっていることが時々あるのですが、その中でも気になるのが「日本の汽水湖は比較的最近(約6000年前の縄文海進以降)にできた」です。
たとえば平井幸弘著「湖の環境学」に地形解析の結果が紹介されており、「現在みられる海跡湖の地形景観は、完新世の海進後に新たに出現したものではなく、少なくとも12〜13万年前の最終間氷期の海進期までその起源を遡ることができる。」(136ページ)と締めくくっています。
また福井県の水月湖は過去7万年間「年縞」が堆積しており、そのうち5万年分のデータが昨年7月の世界放射性炭素会議で放射性炭素年代測定の較正に採用されました(日経サイエンス2014年1月号19ページ)。水月湖は直接流入する河川がなく、外海の波浪もない湖の状態で徐々に沈降して現在に至っているため、世界的にも例のない昔までさかのぼれる年縞が蓄積してきたのです。
「日本の汽水湖は比較的最近」は、汽水が専門と称している方が書かれているそうです。本当だとしたら、もう少し丁寧な説明が必要ではと思います。
- 作者: 平井幸弘
- 出版社/メーカー: 古今書院
- 発売日: 1995/10
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