研究のモチベーション

今年度卒業のM君の修論は、手賀沼のハス群落がフィールドでした。ハス群落は有機物の蓄積と流れの現象の2面から酸欠になりやすく、極度な酸欠状態が長期間に及んでいるため、湖底からは非常に酸欠が進んだ状態で発生するメタンがでていることを示しました(驚くべきことに、冬でもメタンがでてくる。。)。
霞ヶ浦では地元住民と乖離し、かつ科学的素養が皆無のNPOがマスコミなどで影響力を持ってしまって、環境保全に大きなマイナスとなっています。それで私が大学に移って最初にしたことは、手賀沼環境保全に関わっている住民団体の方々や行政関係者の方々との連絡会を作ることでした。2年ほど定期的に発表会を続けた結果、関係する方々と直接お話できるようになり、今では会合は開かず、直接連絡させていただいています。
今回も関係する住民の方々にこの修論のPDFをお送りしたところ、早速、県の環境関係や土木関係に転送してよいかとのお問い合わせや、ハス群落による「浅沼化」の影響を見る資料になるのではないかなどのコメントをいただきました。
M君の修論は群落中の総流速を測るという新たな試みで十分国際誌に投稿できるのですが、英語ではなく日本語でみなさまに真っ先にお見せできて、とても満足しています。実は私のD論も、東京大学理学部の学位論文にしては珍しく、日本語で書きました。宍道湖でお世話になったみなさまに真っ先に読んでいただきたいという理由で、押し通しました。結局のところ私にとって研究の最大のモチベーションは、世界的に名の通ったジャーナルに論文を載せることでは全然なく、真に水域の環境保全に役立つデータを出すことなんだと思います。