水域における自然再生事業と環境教育

陸水学会企画委員会主催公開シンポジウム「環境教育と陸水学〜善悪を超えて」、約140名の参加をいただき、無事終了いたしました。質疑討論の時間が十分に取れなくて残念でしたが、多くの方から「よい企画だった」との評価をいただきました。
以下に私の発表の概略を記します。またシンポジウムの要旨集をご覧になりたい方は、私までご連絡ください。

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環境教育等による環境保全の取組の促進に関する法律(H24.10) ではNPOなどの民間との連携を重視する一方で関連する学会との連携は視野にいれていません。しかし水面下の現象は陸上と異なり、多くの一般市民にとって見たり感じたりすることができず、あり得ないイメージ図を信じ込みやすい傾向があります。講演では霞ヶ浦アサザ植栽事業を通じて、水域における自然再生事業と環境教育の問題点を示し、対策案を紹介しました。
茨城県では、自然科学の素養がないNPOが「アサザを植えると水質がよくなる」と売り込んで、環境教育として茨城県に入り込み子供達を洗脳しました。専門家とされる科学者もNPOの主張を援護し、アサザには波を消す作用と水質浄化作用があるとのデマが茨城から全国に広まってしまいました。その結果、義務教育の理科の教科書にまでこのデマが掲載され、現在に至っています。
どうすればよいのか。ひとつは、場全体を総合的に捉える陸水学の考え方を、教育現場にまで普及させることです。
もうひとつは、順応的管理を言い訳に環境アセスメントを省略しないことです。これについては明日の記事で詳述します。
また、自然再生事業は不確定性を伴うものです。子ども達に環境教育として自然再生事業に参加させ、後でそれが間違っていたと分かっても、間違っていたことを伝えるすべはありません。従って自然再生とされる事業に、学校教育として子ども達を参加させてはならないと考えます。