アサザは霞ヶ浦でしか種子生産できないと主張した論文、無料ダウンロードできます

9月14日記事で、霞ヶ浦では「国内でアサザが種子生産できるのは霞ヶ浦だけである」「アサザの遺伝的多様性は霞ヶ浦が最も高い」との推進側の研究成果を根拠に霞ヶ浦でのアサザ保全は緊急を要するとされ、きちんとした環境アセスメントは行われなかったことを紹介しました。生態学者によるその根拠を示した論文(保全生態学研究14 : 13-24)は、下記で無料ダウンロードできます。
http://ci.nii.ac.jp/lognavi?name=nels&lang=jp&type=pdf&id=ART0009161282
アサザはおしべがめしべより長い花型と、おしべがめしべより短い花型が交配しなければ種子生産できないとされています。この論文の表1を見てください。霞ヶ浦以外の水域では47地点でサンプルを取っていますが、このうち半分以上の26地点で、花型を調べていないのです。これだけでも「霞ヶ浦でしか種子生産できない」とは言えないことが明白です。

さらに、著者らが唯一2型を同所的に確認し、さらには遺伝的多様性が最も高いとした1B01地点では、57サンプルも取っているのに対し、霞ヶ浦以外の水域では数点しか取っていません。1サンプルしか取っていないところも11地点もあります(1サンプルでどうやって2型あるかどうか判断できるのでしょう?)。
実際、私達はアサザの面積が30平方メートルあって、彼らが3サンプルしか取っていないところで15サンプル取ったら、ちゃんと2型ありました。

このように一目でバイアスがかかっていることが明らかな自らの研究成果を根拠に、この論文の共著者の一人が「アサザ保全は緊急を要する」と環境アセスメントもしないで消波堤を造成することに加担し、貴重な砂浜湖岸がヘドロ化(泥質化)してしまいました。

著者らはいまでも、日本でアサザが種子生産できるのは霞ヶ浦だけと信じているようです。研究した本人達は、自分達の成果に疑いを持っていないから論文にしたのでしょうから、生態学者間の査読段階で、この研究にはバイアスがかかっていることを見抜く必要がありました。しかし小保方論文でも分かるように、査読で明らかな誤りを見逃すことはNatureでもあり得ます。だからこそ、事業を進めたい側の研究成果だけで、アセスメントもせずに事業を進めてはならなかったのです。