花里孝幸著「ネッシーに学ぶ生態系」

○○菌によって水質が浄化するというのは本当か、ハクチョウの餌付けが水質に与える問題、「魚がたくさん住めるきれいな湖にしよう」というキャッチフレーズの科学的誤りなど、広く誤解されている水質に関わる項目を、物質循環の考え方から分かりやすく解説しています。なるほど、一般向けにはこういう感じで解説すればよいのかと、とても参考になりました。水を考える生態学は特定の生物群だけではなく系として考えること、物質循環の考え方が基本であることがよく分かります。
海洋生態学者はまともな人が多いのに、日本の湖沼の水草については偏った見方をする研究者がメジャーになっているのを、かねてから不思議に思っていました。本書を読んで私が考えていた原因が当たっているかもしれないと思いました。海洋では物理、化学、地学など、生物関係以外の研究者もひとつの船に乗って長い時間を一緒に過ごします。本書の筆者も、霞ヶ浦を船で調査したときに、同様の経験をしたことを書いています。船の上では、様々な学問からの同じ水域の事象を話します。生態系を正しく理解する上で、同じ場について様々な学問の考え方を共有することは必須のことなのです。

ネッシーに学ぶ生態系

ネッシーに学ぶ生態系