世界をリードする宍道湖

この3日の間、土木、水産、環境と様々な観点から宍道湖の生態系、環境はどうあるべきか、そのために何をすべきか、議論が行われました。
初日は河川管理者である国交省の事務所の勉強会の形で、研究者や地元NPOの研究成果をご紹介し、同時に河川管理者の取り組みの現状について教えていただきました。
3日目の午前には、湖沼法に基づく第六期計画、そして5年後の第7期計画を見据えて宍道湖の水質目標を実現させるためにはどうすればよいのかという環境サイドからの議論がありました。
中日の2日目は、宍道湖の水産資源の保全と再生を目指した宍道湖保全再生協議会が開催されました。人間側の都合で土木、水質、水産と優先事項は変わるわけですが、その対象である湖沼は1つしかないわけです。それぞれのニーズがバッティングせず、かつ全体的に最も得るところが多い状態に持って行かねばなりません。そのためには治水・利水を含む河川管理、水質、水産がバラバラに議論して対策を検討するのは無駄もあるし相反する施策になる危険もあることから、皆が一堂に会して議論しようということになり、宍道湖保全再生協議会には環境サイド、土木サイドにも参加いただいての議論になりました。もちろん、地元大学や地元NPOなども参加いただいています。即ち、いわゆるステークホルダーの大部分による議論となりました。私が知る限り、このような場を実現したのは、日本では宍道湖だけだと思います。
その議論で浮かび上がったのは、河川と湖沼環境と水産の全てを含めたシミュレーションモデルを造らないと、将来は決して予測できない、だからどのような施策をすればよいのかを判断することもできないということでした。
具体的には、宍道湖はこれまで流入負荷をLQ式で出していたわけですが、そのときの水質に、河道で生産されるヨシゴミとか葉の形で入る有機汚濁負荷は範疇に入っていなかったことから、新たにそれらを含めた負荷推定が不可欠ということになります。また、塩分のどこかのレベルで藍藻類卓越なのか珪藻類卓越なのかが決まる、そしてその植物プランクトンがどちらのかでシジミの漁獲量が決まる、そしてその漁獲量が続いたらどうなるかが次のステップになるということがわかりました。
そうなると、河道での植物生産モデル、中海からの塩分供給を踏まえた塩分再現モデル、そしてシジミの餌がラン藻か珪藻かでシジミ代謝が大きく変わることから塩分の閾値をいれたモデルなど、宍道湖生態系のシミュレーションにな、それぞれ個別に行われてきたモデルを統合せねばならないということがわかってきました。
これはまさしくDPSIRです。ヨーロッパで発達したDPSIRという概念を、私はいち早く察して、この方面で、汽水域ではリードしていた親友のAに日本に来てもらって講演してもらったのですが、あいにくタイミングが早すぎたようで、後になって彼女の話を聞いていない人が、全く間違ったDPSIRを汽水域で当てはめるプロジェクトを展開することになりました。これは本当に不幸なことだったのですが、ここで私が書いてきたことこそが、親友Aが、ヨーロッパがやろうとしているDPSIRなのです。そして親友Aは、真澄のラグーンはすごいね、ヨーロッパでも是非そうしたいと言います。
つまり宍道湖は日本だけでなく、世界的にも、すごいことをしているラグーンなのです。
この3日間の議論を踏まえて、やっぱりそうなのだ、この宍道湖でできなければ、世界の他のラグーンでできるはずもないことを挑戦しているのだと、改めて確信しました。
今日の漁協さんとの懇親会でも話しましたが、そういう意味では日本の省庁さんは、世界でも注目されている宍道湖の現場を見て物を言っているわけではありません。宍道湖の地元の方々は、なので、自らの経験の方が正しいと思って、物を言っていいと思います。