かな・ちかメールNo.199から、「小樽飲酒ひき逃げ事件の判決は求刑通り懲役22年」を抜粋しました。「かな・ちかメール」は東名高速飲酒運転事故で娘二人を失ったお母様が不定期で発信しているメールです。
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昨年7月13日に発生した小樽飲酒ひき逃げ事件に対する危険運転致死傷罪裁判で7月9日、札幌地裁で判決の言い渡しがあり、夫婦で傍聴してまいりました。
「主文、被告を懲役22年に処する」
と裁判長が読み上げたときに、傍聴席からは小さな歓声が挙がりました。
その後に読み上げられた判決は、被告の情状酌量を一切認めない、簡潔かつ明瞭なものでした。
全文が大変貴重なのですが、骨子の一部を書き出します。
「被告は歩行者を全く意識していなかった。前方を注視していれば容易に被害者を発見可能であったはず。そもそも時速50〜60キロもの速度を出しながら、15〜20秒も下を向き続ける運転態様自体が、『よそ見』というレベルをはるかに超える危険極まりない行動だ。自殺行為に等しく、正常な注意力や判断力のある運転者であれば、到底考えられない行動である。正常な運転が困難な状態にあったことが客観的に見て明らかだ。
これほどの異常な行為をしたのは、表面的にはスマホの操作によるものだが、運転をする際に必要となる最も基本的な注意力や判断力がほぼゼロであったからにほかならない。被告は歩行者が通ることもあると分かっていたのに、歩行者の確認について全く意識すらしていなかった。
単なる油断では説明がつかない著しい注意力の減退や判断力の鈍麻は、常識的に見て酒の影響によるものとしか考えられない。
被告は『酒が残っていなくても今回の事故を起こしていた』と述べるが、あれだけの運転をしながら、何の根拠で酒の影響が全くないと言い切れるのか理解に苦しむ。アルコールの影響で正常な運転が困難で車を走行させ、人を死傷させたことは明らかだ。酒による体の変調を自覚し、危険な行為も余すところなく認識しているのだから、故意も問題なく認められる。
なお、被告は『普段もスマホを操作しながら運転することがあった』とも述べている。仮に被告が今も普段のよそ見と同じと考えているのなら、運転とは名ばかりの行為を運転というのに等しく、常軌を逸している。」
【刑を決めた理由】の最後の一段落より:
「今回の事件は、アルコールの影響による危険運転の類型の中で、これまでの例を相当に上回る重みがあると考えられるし、被害者の安否を確認せずに道路に放置したまま走り去っている。被害の大きさのみをとっても相当大きいし、ひき逃げをしている。被告が謝罪していることなどを考えても、懲役22年が相当である。」
改めてこうやって骨子を読んでみても、被告はぐうの音も出ないであろう、見事な判決でした。
危険運転致死傷罪ができてから13年半。
これほどまでにバッサリと被告の主張をすべて退けて、「車を運転する」という行為がいかに重い責任を伴うことであるかという根源的なことを伝えようとしている判決を私たちは聴いたことがありません。
閉廷後、被害者ご家族らは、みなほっと安堵した表情をされていました。
記者会見で、亡くなられた原野沙耶佳さん(当時29歳)の父親である原野和則さんは、
「数多くの署名や手紙を頂き、訴因変更ができてここまで来ることができた。なぜ立ち上がったかというと事件の真実を知りたかったから。娘にとってみれば私は良い父ではなかった。だから最後には亡き娘に親としてできる事をやろうという気持ちがあった。いつも胸に遺髪をしのばせているのでもう娘は判決を聞いていると思うけれど、帰ったら改めて報告したい。」
と述べられ、また被害者家族らが表立って活動をしないとならなかったことについて尋ねられると、
「昨年の8月21日、札幌市街頭での署名活動の場に行き、自然と涙が出てきた。私どものためになぜこういうことをしてもらえるのか?と思った。署名を集め始めると手ごたえがあった。みんな『おかしい』と言っていた。被害者にとって不利な判決が多い。被害者が声を挙げなければ誰もサポートしてくれない。北海道の交通犯罪被害者遺族に会えて、本当に感謝している。」
とおっしゃっていました。
裁判官が被告を断罪した今回の判決の意義と、遺族らの「もう二度と私たちのような悲しくつらい想いをする人が出ないでほしい」という願いが全国のドライバーに届くことを祈っています。