ひと頃、ヨシやアサザを植えるだけで水質浄化になるとの誤解が日本を席巻していました。中学校の理科の教科書にもそう書かれていたほどです。水質浄化がCODを指標とする有機物の削減であれば、有機物であるヨシやアサザを植えることで浄化になるはずもなく、欧米ではヨシから溶出する有機物について多数報告されています。
環境省の出版物でも、かつては植えるだけで管理不要としていましたが、最近は「植生を活用する(生やして刈る)取組(植生浄化)」「湖内等の水草を刈り取る取組」など、管理の重要性を明記するようになっています。
http://www.env.go.jp/press/100125.html
島根県の宍道湖は、ヨシを植えるだけでは水質浄化にならないことにいち早く気づき、2012年にヨシ植栽を中止した、とても先進的な湖です。既に存在するヨシについても、ボランティアによる刈り取りが行われているそうです。
https://www.facebook.com/izumo.city/posts/742702882542223
かつてはヨシは刈られたりヨシ焼きされていたので、有機物(枯れヨシ)の流出がありませんでした。枯れヨシではイネの病害虫が越冬しているので、ヨシを焼くと殺虫剤をまく量が減ると農家の方から聞いています。また長野県に生息する絶滅危惧種のオオルリシジミは、野焼きすることで卵寄生蜂(メアカタマゴバチ)の寄生率を大きく抑制できるとの報告もあるそうです。しかしダイオキシン発生の懸念から野焼きがほとんど行われなくなったこともあり、ヨシ焼きの復活はなかなか難しいようです。
古くから行われていた野焼き、池干しなどは、自然とともに生きてきた日本人の知恵の賜だったと思います。「公害列島」といわれた状態を克服した今こそ、高度経済成長期以前の日本で行われていた営みの再評価が必要ではないかと思います。