柴山元彦(著)「3D地形図で歩く日本の活断層」

熊本地震発生直後は、テレビなどで「活断層」という言葉がよく使われていました。しかし活断層とはどういうものなのか、分かっていない人がほとんどだと思います。ましてや、それが高速道路や温泉の立地と関係しているなんで、思いも寄らないことでしょう。近くに火山がないのに温泉が自然に湧いているところは、地下深くから断層に沿って上がってきた場合が多いです。また活断層によって作られる谷は集落間を短距離で結ぶ道として古くから利用され、高速道路の多くがこの谷地形を利用しているのです。

本書では冒頭の「活断層ってなんだろう?」で活断層の定義や種類、断層に特有な地形、生活との関係などを紹介しています。この10頁を読むだけで、活断層をよく理解できると思います。

次に6・7頁の「本書の見かた」を読んでください。この本では18頁以降、日本各地の活断層を地形図、3D地形図、シームレス地質図、写真を使って説明しています。このうち地形図、3D地形図、シームレス地質図の見方を説明しているのがここです。これらはインターネットで無料で公開されていますので、本書で判読法をマスターすれば、お住まいの地域の活断層の位置が分かります。また、熊本地震では益城町の軟弱地盤の場所に家屋倒壊が集中しました。地質図の見方が分かれば、軟弱地盤かどうかも無料でチェックすることができます。

本書の使い方の応用編として、活断層による地形を紹介した写真を眺めておくことをお勧めします。上述のように、日本はどこに活断層があるか詳しく調査されていて、かつ無料で情報を入手できます。しかし海外、特に開発途上国では必ずしも十分ではありません。そもそも地質図や地形図も公開されていません。しかしインターネットを使えば、Google Earthで地形を見ることはできます。少なくとも川が断層によって曲がっているかくらいは、立体にしなくても分かります。もし滞在予定地に活断層があったら、宿泊するホテルではなるべく上の階を予約するなど、対策を立てることができます。

海外でのリスクはテロだけではありません。自分の身は自分で守ることが求められる時代なのです。

3D地形図で歩く日本の活断層

3D地形図で歩く日本の活断層