研究者も十分睡眠をとりましょう

5月16日に放映されたNHK総合「ガッテン」で、睡眠6〜8時間、昼寝30分を取る人はアルツハイマー認知症になりにくく、寝ている間に脳のゴミが排出されるからと解説していました。

認知症は原因によって何種類かに分かれ、アルツハイマー型が約50%、脳梗塞など血管の異常で起こる脳血管性が20%、レビー小体型が20%、前頭葉や側頭葉が萎縮する前頭側頭型を含むその他の原因が10%程度だそうです。

レビー小体が増える原因は分かっていません。脳梗塞動脈硬化血栓などによって起こりますので、肥満、飲酒、運動不足などが原因と言えます。前頭側頭型も原因は分かってないそうですが、画像を見ると前頭葉や側頭葉が萎縮しているので、飲酒を長年続けることによる萎縮も原因のひとつではないかと思います。

私は若い頃は徹夜の観測など、頭を使わず体力だけが勝負みたいな研究が多く、徹夜仕事も結構していました。しかし37歳で交通事故に遭い脳脊髄液減少症を発してからは、単に横になって髄液を頭に戻すだけでなく、睡眠によって症状がわずかによくなる(逆に睡眠が不足すると悪化する)ことに気づきました。たぶん髄液が寝ている間に多く産出するからだと思いますが(だから睡眠中に脳のゴミが排出されるのでは?)、睡眠にも質があって、飲酒後の睡眠よりは睡眠導入剤による睡眠の方がはるかに体調が改善されました。事故後しばらくはわずかのアルコールでもかなり頭痛がひどくなったので、もしかしたら飲酒は脳をさらに縮めるのではないかと思っていました。

こういった経験から、認知症防止の上で最も大切なのは運動だと思っています。適度な運動によって夜は自然に眠くるようにし6〜8時間くらい寝る。運動により高血圧や肥満を防ぐことで、血管性認知症の防止にもなります。そして眠れない心理状態が続くときはアルコールに頼るのではなく、心療内科などを早めに受診して睡眠導入剤を処方してもらうのがよいと思われます。

ガッテンによると、脳のゴミは40代前半から既に発生しているそうです。競争が激しい研究職だと慢性的に睡眠不足になりがちだと思いますが、少なくとも40歳が近づいたら、6〜8時間の睡眠が確保できるように研究スタイルを変えるのがよいと思われます。所属する学会の同じ世代でダントツに優秀だった方が、50代そこそこで認知症になってしまいました。若いときには弾丸のように論文を出していたので、もしかしたら若い頃の無理がたたったのではないかと残念に思っています。

長い目で見たら、中年まではそこそこの業績でも、頭脳明晰なまま年を重ねることで経験知を加える方が、特に環境関係についてはより充実した研究につながるように思います。

追伸
今回のガッテン、久々に面白いと思っていたら、陸水研OBのM君の企画だったそうです。Nスペ目指して精進中とのことでした。