島根県と鳥取県にまたがる中海は、境水道で日本海につながる汽水湖です。このため汽水環境成立以来、水温が高い時期には底層が貧酸素化していたことが柱状堆積物の分析から分かっていますし、神戸海洋気象台が1929年7月に行った観測でも、塩分成層が形成されていることと、底層が貧酸素化していることが明らかになっています。
ただし近年になって干拓目的で堤防で囲まれることになった本庄工区という地区では、塩分が比較的薄い水しか中海本体から入ってこなかった為に塩分成層が形成されにくくなりました。その結果、この地区では水温が高い時期でも貧酸素化しにくく、魚や貝も中海本体より豊富に生息していました(以上については下記論文で解説しています)。
山室ほか(2012)沿岸域における人為改変と自然再生 ー中海本庄工区の堤防開削を例として
山室ほか2012応用生態.pdf
ところが、中海は堤防を作ったから貧酸素化するようになったと信じて疑わない人達がいて、科学者であるにも関わらず「アインシュテルング効果」(問題の解のうち最もなじみ深いものに脳が固執して、その他の解を無視してしまう頑固な傾向のこと)から抜け出せないようです。
今回、こともあろうに私が堤防によって環境が悪化したと主張しているかのように、私の論文を引用している論文を見つけてしまいました。いい加減にしてくれ!です。
Yamada et al (2014) doi: 10.1111/maec.12082
著者らがまともに英語も読めないとか、故意でやってるなどではないとしたら、相当頑固なアインシュテルング効果にとりつかれていると思われます。困ったことです。