水草は雑草、刈り取りではなく根こそぎに

琵琶湖南湖では1990年代初めに生え始めた水草が、今では湖全体に繁茂しています。水草がないとアオコが発生し、あると透明度が高い湖になるとNatureに載った小保方論文級の怪しい説がファンタジーに過ぎなかったことを見事に証明して、水草に覆われた琵琶湖では、2016年には過去最多のアオコ発生、2017年には過去最速のアオコ発生と、記録を塗り替えています。
https://mainichi.jp/articles/20170722/ddl/k25/040/520000c
www.sankei.com/west/news/160907/wst1609070025-n1.html
さらには、水草によって魚が回遊できなくなり、もちろん二枚貝も住めなくなり、「死の湖」とさえ表現されるようになりました。
http://www.yomiuri.co.jp/local/shiga/feature/CO020291/20151202-OYTAT50068.html
こうした事態に琵琶湖を預かる滋賀県が何もしなかったわけではなく、毎年数億円かけて水草の刈り取りを行って来ましたが、繁茂域は拡大を続けて今日に至りました。
なぜこうなったのか?それは水草を雑草と考えていなかったからです。
ここに裸地があったとしましょう。何もしなくても勝手に生えてくるのは雑草です。草ぼうぼうになるのを防ごうと思ったら、伸びるのを待って先端だけ刈り取るでしょうか。根が残ったらまた生えて来ますから、普通は手間がかかりますが、初期段階で根こそぎ抜きます。これをしなかったから、毎年刈り取ってもイタチごっこの繰り返しになってしまったのです。
こうなってしまうと管理が大変なので、私の住まいの近くの空き地では、除草剤をまいて雑草を枯死させています。
1950年代後半から、日本では水田の雑草を抜くのではなく、除草剤で駆除するようになりました。田んぼにまかれた除草剤は、川や湖に入ってきます。このため日本の平野部湖沼では全国一斉に沈水植物と呼ばれる水草が衰退しました。
しかし近年になって除草剤を減らすべきとの機運が高まり、特に琵琶湖では早くから農薬の空中散布を禁止するなど、先進的な取組をしていました。このことが1990年代に水位低下に伴って水草が生え始めた背景にあったと私は思っています。
そして2016年、食品中の残留農薬の基準が厳しくなった翌年、宍道湖ではシジミから新たな基準に引っかかる除草剤が検出され、出荷できなくなりました。翌年には除草剤の販売量がかなり減り、その翌年から水草が繁茂するようになりました。
つまり日本の平野部湖沼は、長い間除草剤で雑草を抑えていた空き地のような状態だったのです。その除草剤の影響が一定以下になったところから、沈水植物の繁茂が始まるハズです。このことは、1950年代に除草剤が使用されても最後まで残っていたヒシなどが、全国の複数の湖沼で沈水植物に先駆けて異常繁茂を始めていることからも推測できます。そして予測していたように、諏訪湖では今年から沈水植物のクロモが繁茂し始めました。
1950年までは化学肥料がなかったので、水草が徹底的に刈り取られて利用されていました。資源だったのです。しかし今の日本では水草は刈り取りにも、その処理にもコストがかかる、ただの雑草に過ぎません。対策はただひとつ。刈り取りではなく、根こそぎにする方法を開発することです。
今年の競争的資金応募レースには4件提案する予定ですが、うち2件がこの「根こそぎ法開発」ネタです。