今日は西條八束先生の10回忌

今日は西條八束先生の10回目の命日です。
先生はWikipediaでは1行目に「陸水学者」と紹介されています。陸水学は陸水の諸現象を地学・物理・化学・生物などに偏らず、総合的に解明する学問です。陸水学の古典、かつ今でも教科書としてこれを超えるもののない吉村信吉著「湖沼学」の「総合湖沼学」で解説されていることが、陸水学の神髄だと私は思っています。
最近は陸水学会会員でも、専門を「陸水学」と書かず、「陸水物理学」だったり「生態学」と紹介している方が多い中で、先生は「陸水学者」と紹介されるにふさわしい方でした。
そんな先生の足下にも及びませんが、私の専門について、「海草・水草」とか「サンゴ礁」とか、人によって様々に言われるのは、幅広く研究していることの反映かなと思っています。
先週末も水文科学会30周年シンポジウムで陸水学会の紹介がてら、なぜ生態学者を中心に「アサザには水質浄化作用がある」とのデマが支持され、それが中学の理科の教科書にまで採用されてしまうまで広がってしまったのか解説してきました。流動という物理現象の知見が抜けていること、バクテリア代謝という生化学にも疎いこと、何より光合成という生物学の基本さえ抜けていて、基礎的知見を総合するという姿勢が欠落していることを指摘したのですが、非常に好評だったようで、学会誌に投稿するよう依頼が届きました。
西條先生は長良川河口堰問題で事業者にデータを公開するよう働きかけるなど、対立ではなく対話で総合的に問題を解決する道筋を造ろうとされていました。一方某学会やその中心人物は、やたらクレームをつけることで事業者に影響力を及ぼすようになりました。本来、陸水圏の環境問題を専門に扱えるのは生態学者ではなく陸水学者だと思います。西條先生がやってこられたように、事業者や地元の方々との対話や情報伝達を通じて、陸水学的な考え方や問題解決に尽くそうと、改めて思っています。