就活は売り手市場

3月1日で就活解禁。売り手市場ということで、人手不足に悩む企業が、あの手この手で学生に売り込む様子が報道されていました。
売り手市場の大きな要因が少子化で、これは大学にとっても同じことで、学生は今後減少して当然なのです。特に修士に進学する若者は激減する可能性大です。
それでも修士に進学する学生は、理工系に限れば、ひとつは技術を身につけることで自分がやりたいことができる企業に就職できる可能性が確実に高まる場合です。息子が卒業した某技科大がその典型で、9割以上が修士に進学します。もうひとつは、当初から研究者を目指していて、修士・博士まで進学するのが当然と思っている例です。これらはいずれも、学部を卒業した大学で進学するのが大部分です。
それでは学部とは異なる大学の修士に進学する学生は、何がメリットで2年間も授業料を払って進学するのでしょうか。
ひとつは就活で行きたい分野で採用されなかった、もしくは就活が始まった学部3年後半の時点でどういった分野に行きたいのか決められなかった場合でしょう。そのような学生さんにとって魅力な専攻は、就職に有利、入試勉強のロードが少ない(特に理工系は英語が苦手な学生が多いので英語の試験がないと魅力)、授業料が安い(もしくは支援がある)、生活費が安い、などでしょう。
もうひとつは外国人留学生です。日本で就職したい、もしくは先進国の大学で勉強したいけど、できれば母国と近い方がよいと考えるアジアからの留学生にとっては、修士からの日本留学はメリットが大きいでしょう。こういった学生にとっても、上記に書いた経済的なメリットがある大学が選択されやすくなるはずです。さらに、日本での就職を目指している学生の場合は、日本人学校などで日本語を学んで受験する場合が多いので、英語の試験で評価されるところは敬遠されることになると思います。一方で公用語が英語だとか、研究者を目指しているので英語は必須と覚悟している学生にとっては、英語の講義が豊富なことが選択肢になると思われます。
私が所属する自然環境学専攻では数年前から修士に進学する学生が激減しています。大きな原因は学部を持っていない、生活費が国内でも高い、研究科の他の専攻が工学系で受け皿が大きいのに対し理学・農学分野が専門なので就職に特に有利ではない、英語も含め入試勉強の負担が比較的大きい、などでしょう。その上、入試には英語を要求するのに講義の大部分は日本語ですから、外国人の口コミもあまりよくないのではないかと思っています。その中でコンスタントに修士・博士に外国人が進学している先生がお一人いて、その先生は講義も英語でされています。さすが先見の明ありと評価しています。
私自身は大学に移った時から、これからは少子高齢化だから社会人が入りやすいようにすべきと提案し、社会人入試WGを立ち上げたりしてきました。ゆくゆくは定年退職したシニアをターゲットにしたカリキュラムも用意すべきと思っていましたが、専攻の大多数の教員と私とは世の中の見方が根本的に違うようなので、今は特に何もしていません。もし東大定年後にどこかの大学に再就職したら、是非、シニア層をターゲットにした体制に挑戦したいと思っています。