水草が繁茂すると窒素やリンが減ってもアオコが発生するわけ

日本の平野部の湖沼では、1950年代半ばに始まった「農業の近代化」までは根こそぎに近い強度で水草を刈りだして肥料にしていました。だからこそ多様な魚介類が生息することができたのであって、水草が繁茂している琵琶湖南湖ではその隙間に入り込みやすい、ブルーギルなどの平たい魚ばかりになっています。
水草は地上の雑草と同じで、旺盛に繁茂します。なので根こそぎに近い状態に刈り取っても絶滅することなく、むしろ刈り取ってきたからこそ枯死体がヘドロ化することなく、多様な水草が生息し続けることができたのです(アサザを植栽した霞ヶ浦の湖岸はヘドロ化して、二枚貝だけでなくアサザ自身も全滅です)。
ところが日本の主な生態学者達は、この点を全く理解していません。彼らは化学に疎い方が多いので、窒素やリンの流入が減った琵琶湖でなぜアオコが発生しやすくなったのか分からないでいます。
下のPDFは、ある競争的資金のプレゼンで使用したものの一部です。なぜ水草が増えるとアオコが発生しやすくなるのか、なぜ根こそぎに近いくらいの強度で駆除しなければならないのか分かりやすく説明したつもりなのですが、彼らにはこれでも理解できなかったらしく、不採択となりました。
下記は評価者のコメントの一部です。日本人が湖の生態系とどのように向き合って来たのかについて、全く無知であることが露呈しています。
◆すべての種類で芽生えを刈り取るといったことが、本当にエコロジカルなレベルで大丈夫か。
◆在来種もすべて刈り取る、でいいのだろうか。
水草は強度に刈り取るべき.pdf 直
大切な宍道湖が琵琶湖南湖の二の舞になり、漁業者が水草駆除の賃金だけが収入になっては大変です。幸い、宍道湖の関係者は琵琶湖で流されている在来水草に関する間違った情報を妄信することはないので、予算は無くとも関係者の方々と協力して、水草根こそぎ手法の開発を進めているところです。環境の専門家と目されている頭の固い方々を説得するのに時間をかけるような、悠長な状況ではないのですから。