大学というと「学問の府なのだから」と世間の人は大きな誤解をしています。そこに勤める教員は、大学以外の組織に勤める人と全く変わらないということです。そして日本においては、組織を守ることが第一の正義と思いがちです。税金で成り立ち、その税金を公正に分配する責を負う財務省でさえ、特定個人の利益を忖度し、存在する書類を「無い」と公言して憚りません。そうすることが組織の為だと思っているからでしょう。
大学に勤める教員の大多数も、収入を得る場である組織を守ることが最優先になります。学生は組織に属しているとは言え、数年で出て行くネギをしょった鴨です。対等の存在ではありません。従って同僚である教員が学生に不利益になるようなことをしたら(今回のケースやパワハラ)、それを公にして謝罪するのではなく、学生の非にして同僚を守る(=学生に泣き寝入りしてもらう)のが最良の選択肢なのです。
そう考えると、日大がなぜああいう対応をするかがわかります。大学教員の大多数が、自分の組織で同様のことが起こったら、日大と同じ方向で検討するはずです。私が経験した事例もまさにそうです。私は教員でしたが、被害学生を守る立場を取ったために、すさまじいハラスメントを受け、地裁に訴えてやっと和解に至りました(2016年10月14日付記事)。
今回の日大のケースでは、パワハラによって違反行為をしてしまった学生の周りにチームメイトがいて監督の指示があったと証言していること、また違反行為をしたあとに監督から注意されていないビデオが流れているなどの情報がマスコミを通じて公開されています。反則行為を行うまで追い詰められた学生さんにとっては、不幸中の幸いだったと思います。教員からのパワハラを受けた多くの学生は、その事実を証明できないのが普通です。
今回のケースは決して特殊ではありません。学生さんやその保護者は、大学は多かれ少なかれ日大と同じ組織と思うべきです。そして少しでもおかしいと感じたら音声記録なり映像記録なりを確保し、その証拠を携えてまず弁護士か警察に相談しましょう。決して大学に先に相談してはなりません。