お花見できるほどのアサザ群落はいずれ霞ヶ浦から消える

霞ヶ浦は、本来、お花見ができるほどのアサザ群落が永続する地形ではありません。8月14日記事で説明したように、麻生の群落も船溜まりにより本来の強い波の影響が弱くなったから定着したのです。粗朶消波堤を造り波を弱くした植栽地も、数年はお花見ができるほど繁茂しましたが、やがて消滅しました。その原因は枯死体による有機汚泥の蓄積でした(下記リンクの論文に記載しました)。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/rikusui/77/1/77_39/_pdf/-char/ja
8月16日記事で、国交省が造った石積み消波堤内に侵入したアサザが麻生で消滅しても健在であることを紹介しましたが、それはアサザが侵入して日が浅いからで、やがては自身の枯死体により消滅します。
アサザが消滅した後の消波堤内には、ヒシが繁茂するはずです。このことは霞ヶ浦を30年にわたって観察し続けてきた下記の本の著者も同著で予言しています。
ちなみに、当時は予測されていなかった外来植物の繁茂が、現在、消波堤内部で問題になっています。アサザ植栽事業までは霞ヶ浦に存在しなかった、そして日本の他の大湖沼ではこれ程の規模で造るという非常識なことはされていない消波堤さえなければ、波が高い霞ヶ浦の砂浜湖岸に外来植物は定着できなかったのです(琵琶湖でも繁茂しているのは流入河川近くなど、波当たりが弱いところです)。
同著ではさらに、アサザ植栽運動とは何だったのか、同様の、保全と称する環境破壊が他の水域で繰り返されない為にはどうすればいいのかにも触れています。身近な水域の保全に関わっている方々には、是非読んでいただきたいと思います。3回にわたりこのブログでご紹介した保全生態学者が霞ヶ浦で行ったことについても、極めて冷静に分析し、何が間違っていたかを的確に指摘しています。
ネットから見つけたこの本の書評は下記です。
http://macroscope.world.coocan.jp/yukukawa/?p=2429
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霞ヶ浦考現学入門154頁から
アサザ群落の水域は泥場化が進行するが、それはやがてアサザ自身にとっても存亡の危機となる。砂泥の浅い湖底に伸びたアサザの茎(茎の状態で越冬する)は、強い波浪時には、前述のように波によって引き抜かれ、岸辺に打ち上げられやすくなる。アサザ群落はこのようにして、群落面積の拡大、縮小をくりかえしながら、泥場化が著しくなれば、アサザさえも生育できなくなり、ヒシ群落に少しずつ遷移する。ヒシの種子は、湖底の泥中から発芽するが、成長後は水中に伸びた細根から養分を取るので湖底から離れても生育できる。ただし、ヒシは波浪に弱く、流され、岸に打ち上げられやすいので、静穏域が生育場である。消波施設で囲い込むことはアサザ群落からヒシ群落への遷移を促進することになる。