カワハタ先生の動物の不思議 どこがおなじでどこがちがうの?

まずはお子さんに、好きなところからでいいから見てごらん、と勧めてください。どこから読み始めても、「生き物ってスゴイ!」と感激すること必至です。そして、何の変哲もないと思っていた日常に、実はいろんな不思議が満ちていて、その不思議は生き物たちが今まで命をつないできた合理的な選択の結果であることがわかって、ますます感激するはずです。その命のリレーを引き継いで、私達ひとりひとりが生きているんですね。
ネタバレになってしまうので、ひとつだけ紹介します。
「タコの吸盤、イカの吸盤、どこが違う?」では、右側の頁でタコの吸盤は食べられるのにイカの吸盤は食べられないよね、と指摘しています。そう言えばそうですよね。解説は左頁にあって、タコは捕まえたエサを巣穴まで運んでゆっくり食べるのに対し、イカはエサを捕まえると泳ぎながら食べるので、食べる間に落ちないように吸盤にトゲがあり、それをエサに食い込ませているのだそうです。だからイカの吸盤は固くて食べられないわけです。
文字だけだとわかりにくいのですが、本書ではカワハタ先生自筆のカラーイラストでトゲのある吸盤の拡大図があるので、とても分かりやすいです。写真ではなくイラストなのが重要。写真だと生きた動物で思うような角度・瞬間で撮影するのはほぼ不可能です。その点、イラストだと見せたい角度で表現できるのです。カラーイラストは全ページにあります。
お子さんが思わずお友達に自慢したくなるような話題も。「なぞなぞ この言葉、ホント?」では、「○○が顔を洗うと雨が降る」と出題。○○はネコですね。そしてさらに、このことわざが本当なのかを科学的に解説しています(実は、本当なんです!)。
このようにとてもおもしろくて分かりやすい本なのですが、ところどころに専門用語がルビをふっただけで使われています。お子さんが「これ、どういう意味?」と思って、自分で調べることを期待しているからです。初めからつまらない本なら調べようとは思わないでしょうけど、この本に引き込まれてしまったお子様なら、きっと「もっと知りたい!」と調べ始めるハズです。それこそがカワハタ先生の狙いです。先生はこう書いています。
「何かを調べるとき、どんな手段があるかを知っている。この『検索力』は知りたいと思って調べた経験によって身につきます。やがてこの力は『わかる楽しさ』と、深い『没頭』をもたらしてくれます。自分で知る楽しさを知っている子は、どんな分野でもわが道を切り拓いていける、私はそう信じています。この本がそのきっかけになれば、幸いです。」

カワハタ先生の動物の不思議 どこがおなじでどこがちがうの? (花まる学習会の本)

カワハタ先生の動物の不思議 どこがおなじでどこがちがうの? (花まる学習会の本)

(追伸)
カワハタ先生は現在は理科の先生ですが、修士の2年間だけの研究で、車軸藻という植物について世界で初めての発見をして論文を出した、とても優秀な科学者でもあります。カワハタ先生の論文(下記)は5700回もダウンロードされています。
https://springerplus.springeropen.com/articles/10.1186/2193-1801-2-85