燃焼によってダイオキシンが発生するとして、野焼きが規制されるようになったのはいつ頃だったでしょうか。住宅地などでは「洗濯物が汚れる」などの苦情もあるようですが、最近はそれに加えて、いわゆる香害患者さんたちが、「健康被害を起こす」と農村で刈った稲わらを燃やすのも問題視しているようです。
地方で刈った草、稲わら、ヨシ原などを野焼きできないと、どういう弊害が起こるでしょう。
例えばヨシ原を野焼きしないと、イネにつく害虫が枯れヨシの中で越冬します。手賀沼周辺の漁師さんによれば、ヨシを焼かなくなってから、殺虫剤をまく回数が2度は増えたとのことです。
刈って処分すればと思うかもしれませんが、産廃として処分をお願いするとコストがかかります。堆肥にするにも人手がいります。農村の多くが高齢化で人手不足の中、野焼きできないなら放置、ということになりかねません。実際、地方のヨシ原の中には、かつてはヨシ焼きしていたものの、関係者の高齢化もあってできなくなった例があります。
ヨシ原の場合、稀少植物はヨシを刈るか焼くことで残ってきました。ヨシを放置するとヨシだけの単純な植生になってしまいます。またヨシの灰がそれらの植物の栄養分にもなります。
私が子供の頃は枯れ草や落ち葉を焼く光景は大阪市内でも見られ、ご近所の方がたき火で焼き芋を作って配ってくれるのが楽しみでもありました。下記リンクにあるように、琵琶湖ではヨシ焼きが早春の風物詩となっています。
http://www.omi8.com/annai/suigoumeguri2.htm
日本人は古くから植物を焼くことで自然を管理し、江戸時代には見事なまでのリサイクル社会を成立させていました。香害患者さんは人工化学物質の弊害を十分認識されていると思いますが、そういった人工化学物質に頼らなかった頃の日本では、どのように資源を循環させていたかも考慮いただければと思います。