昨日は、地理出身の私も知らなかった、驚異の地形を見てきました。
斐伊川上流の奥出雲町は、かつて鉋流しで鉄を得ていたことで有名です。鉋流しというと山を削るというイメージだったんですけど、削るどころか、消滅させていました。山を消滅させたあとの谷が棚田になっていて、鉋流しに使った水路がそのまま水田の水路に使用されていました。
今は棚田になっているところが本当はどれくらい高かったか。下の写真の1の部分はその上にあるところを削って流していた平面、その下の2は1の前に削ってできた平面、2の右にある3の矢印の下の平面は、さらにその前に削ってできた平面。つまり今見えている棚田は、かつてはこの写真の一番高いところと同じ高さの山だったのが、長年の鉋流しで平坦な谷底のようになってしまっているのです。
なのでこの地域の段は河岸段丘に見えるのに、川と直角の段になってるところもあって、ビックリします。この地区の小学校の校庭も、鉋流しで山を削って流れ出た土砂で平面にしたものだそうです。
面白いのは地形だけではありません。今は刀剣ブームですが、日本の刀剣をつくるための鉄を今でも供給している日刀保たたらが、今でも稼働しています。また奥出雲町の、たたらで山を削った後の棚田景観は世界農業遺産に申請しているくらい美しく、休耕田がひとつもなく、きれいに整備されています。下記、奥出雲町のHPに、棚田マップや、たたらの動画がリンクされています。
http://www.town.okuizumo.shimane.jp/tourist/guide/post-1147.html
日本では水田を作るために古来から干拓をしてきましたが、鉋流しで山をまるまる消して(秩父の武甲山が2,3個なくなるイメージ)田んぼを作ってきたなんて、地理や歴史の本のどこにも具体的に書いていないので、日本人の大部分にとって初耳ですよね。