欧米では水道水は飲むものではない

下図は国交省がまとめた平成16年版「日本の水資源」の「第Ⅰ編 水資源に関する日本の課題,世界の課題」40頁からです。39頁には「海外へ行けばしばしば経験するように,水道の水をそのまま飲める国、あるいはそのまま飲めるが注意が必要な国は、世界の中ではごくわずかしかない(図Ⅰ-3-6)。我が国は、水道の水質が良く、水道の水がそのまま飲める数少ない国の一つである。」と書かれています。「水道の水質が良く」は正確な表現ではなく、「水道水を塩素で殺菌しているので」と書くべきでしょう。

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水道水が飲めないのは開発途上国だけではありません。欧米のほとんどで水道水は飲めません。私が住んでいたアメリカなど、そもそも水道水を飲むとい発想がないからでしょう、データさえありません。
同じ冊子の36頁に下の図があります。水道水は飲めませんが、欧米ではほぼ100%、安全な飲料水が入手できます。つまり、水道水を飲用にするという壮大な無駄を行っていないだけなのです。

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日本では水道水を飲用にするために、塩素消毒を行っています。これによって様々な有害物質が発生することは水道局でも把握しています。その上で水道水は安全だと主張していますが、何をもって安全とするのかは一律に言えないでしょう。たとえば2月13日記事で紹介した、有害物質が気体となって曝露したときのリスクを水道局は2007年に論文が出るまで知らなかったわけですし、どの濃度なら20年、30年複数の有毒物質を摂取しても影響がないか証明できる試験法はありません。
東京都水道局の調査によると、家庭で使用される水は一人当たり1日245リットルで、うち炊事に使うのは56.5リットルです。残りは風呂やトイレ、洗濯などで、殺菌する必要がない用途が8割近くを占めています。殺菌しない為に有機物が腐敗して洗濯物から悪臭がするなどの問題は、欧米では起こっていません。また2月2日記事で紹介したように、ヨーロッパではミネラルウォーターを殺菌してはいけないので、有機塩素化合物を摂取する可能性は日本とは比べものにならないくらい低いのです。
欧米でもプールは塩素消毒していますが、有害物質が発生するので、塩素消毒に代わる低コスト、かつ少ないメンテで病原菌を減らす技術開発が行われています。
塩素臭がする水道水を平気で飲んでいる日本では、プールを塩素消毒しない需要は少ないと思いますが、化学物質過敏症患者の中には水道水をわかしたお湯では入浴できない方もいます。こういった方が今よりもっと増えたら事態は変わるかもしれません。しかし化学物質過敏症患者が増えてから対策を考えるのではなく、予防的に対策を行うのが本来だろうと思います。
(追伸)
私はエンジニアではないのでシロウトの思いつきですが、プールを塩素消毒しないで病原菌を減らす方法として、下記はどうでしょうか。
・ゴミ焼却場などの熱源を使って水を沸騰させる。牛乳の殺菌のように120℃以上なら数秒でいいので、耐熱性の管を水が通るようにすればよい。
・殺菌された水をプールまで送水。その間に十分冷めるはず。この部分の管は耐熱性が無くてもOK。
・プールの水は再び熱源があるところに送って殺菌する、という循環システムにする。