塩素消毒したプールの海外での実態

2月13日記事「池江璃花子選手の白血病と水道水の塩素消毒は無関係と言えるか?」には疑問視するコメントもきましたが、EUではエリート水泳選手の間に消毒副生物が原因と考えられる喘息が広がっています。下記Wikipediaの英語版(「Disinfection by-product」で検索したもの)で、「asthma」が喘息です。
Swimming pools using chlorine have been found to contain trihalomethanes, although generally they are below current EU standard for drinking water (100 micrograms per litre).
Concentrations of trihalomethanes (mainly chloroform) of up to 0.43 ppm have been measured.
In addition, trichloramine has been detected in the air above swimming pools, and it is suspected in the increased asthma observed in elite swimmers. Trichloramine is formed by the reaction of urea (from urine and sweat) with chlorine and gives the indoor swimming pool its distinctive odor.
上の文章でもあるように、発ガン性のあるトリハロメタン(trihalomethanes)だけだとEUの基準を満たしていても、他の物質(ここではトリクロラミンtrichloramine)も発生して、かつプールから揮発して呼吸時に吸収されてしまうわけです。ureaは尿素ですが、尿だけでなく汗にも含まれています。

トリクロラミンはいわゆるカルキ臭の主要原因物質です。つまり「カルキ臭がするなぁ。」とあなたが感じたときには、あなたもトリクロラミンを吸ってしまっているわけです。
アメリカではトリハロメタン以外の消毒副生物について調査されていて、アメリカ環境保護局が調査した全てのプールで、塩化シアンが基準値以上の濃度になっていました(日経サイエンス2014年10月号で、日本語で記事が読めます)。塩化シアンは化学兵器にも用いられる猛毒です。

www.nikkei-science.com塩素消毒すると多種多様な毒性物質ができ、それが皮膚からや呼吸を通じて体内に入ってしまうことは周知の事実なのです。減らす努力を真剣にしないと、幼い頃から練習を重ねて来たトップ選手ほど病気を抱えることになりかねないと思います。