私の友人はイギリス国籍ですが、父親が外交官だったことからパリ生まれのパリ育ち、幼い頃はフランス語しか話せなかったそうです。ポルトガルの大学で職を得、同国の経済破綻で研究費がほとんど得られなくなってからはノルウエーの研究所にも職を得て、掛け持ちしていました。
イギリスよりはヨーロッパに根ざしていた彼女にとって、BREXITは悪夢です。「もしや大変なことになってない?」とメールしたら案の定で、ノルウエーではクビになり、ポルトガルの大学は70歳まで働けるものの、自宅を維持するためにこれから5年かけて国籍を取得するそうです。
娘が居候させてもらったパリの家について重ねて聞いたところはぐらかされたので、もしかしたら彼女が生まれ育った家も手放すことになるのかもしれません。
40年前にも友達が人災で人生を狂わされてしまいました。高校でアメリカに留学していたとき、イランから来ていたParastoo Ehsaniは、留学中にイスラム革命が起こってしまいました。帰国前のバス旅行ではノースリーブと半パンで明るく振る舞っていましたが、大金持ちだった家族が無事かどうか分からないと言ってました。帰国の日、イランからの留学生は全員チャドルに着替え、「イランで命の保証があるのだろうか?」と泣きながら機内に消えました。帰国してすぐエアメールを出しましたが、返事はありませんでした。無事にどこかに亡命しているよう祈るばかりでした。
天災は忘れた頃にやってくると言いますが、人災はそれまでに無かったことが起こります。地震のように前触れなく起こるわけではないですが、前触れの段階で行動するためには、日頃から多数派の意見に流されず、未来を見通す能力を養わねばなりません。子供達にそれができるかどうか。