「老後2000万円」は過小評価

「老後2000万円」問題で年金への信用がゆらいでいます。今年89歳になる父と同居している私は10年前から、「年金だけで老後を過ごすのは無理!」と分かっていました。なので金融庁の報告書を受け取ろうとしない某大臣は、鉄面皮の固まりに見えます(彼の資産は2000万円程度のハズないですから、他人事なのでしょう)。
今回の金融庁の試算では、夫婦二人の保険医療費を月15512円としています。
https://news.yahoo.co.jp/byline/rickmasuzawa/20190612-00129781/
これを全て医療費とすると、1年で186144円です。
父は79歳で認知症と診断され、以後は服薬治療を受けています。それだけで年間20万円近くかかります。腰椎の圧迫骨折で入院した年は、その3倍以上の医療費になりました。最近は歯の治療もあり(高齢者は歯茎も衰える)、恒常的な治療だけで医療費は年間30万円以上です。夫婦二人とも80歳過ぎから父と同様な状態になったら年間60万円必要となり、金融庁の想定より約40万円オーバーです。
さらに金融庁の試算には、夫婦どちらかが介護が必要になったときの経費(デイサービス、ヘルパーなど)が入っていません。介護が必要になった高齢者を高齢の配偶者がみるのは大変です。週5日くらいデイサービスに行ってもらうとすれば、最低でも月5万円程度の出費になり、年間60万円オーバーです。先の医療費と合わせて、年間100万円オーバー。この状態で80歳から10年間生きると、年金で不足する額は2000万円ではなく3000万円になります。
上記の見積は最低限です。父は幸いなことに、認知症と診断されてから10年間、要介護1の状態を維持しています。多くの場合はもう少し進行が早く、介護費用は月5万円なんてものではなくなります。また今は癌が早期治療により治る例が増えていますが、それはすなわち、高額医療費がかかるということです。金融庁の試算は医療費や介護費を過小評価しています。総務省の家計調査データから算出したとされていますが、要介護者とか認知症高齢者世帯はこういった調査に回答する余裕がないのではと思われます。
さらには年金額が減額になるリスクがあります。父の場合、国からの年金と、会社で入っていた大阪薬業年金基金の2組織から年金が支給されていました。しかし後者が去年で解散し、その分も国から支給されることになったところ、年間30万円も減りました。
父に送られてくる年金額改定通知書には「年金額は物価や賃金の変動に応じて改訂を行う仕組みとなっています」と書かれています。賃金統計の数値が間違っていた問題は記憶に新しいところです。あの時、「アベノミクスが成功しているように見せるための忖度だったのでは?」との見解がありましたが、誰かの意向を反映してか単純ミスかで、年金を減らす方向の統計値が出ない保障はありません。
北欧などと違いこの国では、自分の老後は年金に頼らず自ら守らねばならないと考える方が無難です。こういう状況で消費税が「高齢化社会の社会保障」を理由に10%に上がるのは大いに不満です。娘は現在フランスに住んでいますが、こんなデタラメな国には帰らず、ヨーロッパに住み続けてほしいと思っています。そしてエンジニアの息子も、この国にずっと住み続けようとは全く思ってないようです。当然でしょう。