参考書30:The wondrous workings of Planet Earth

生態系に共通する基本的枠組(分類体系、物質循環など)をざっと解説した上で、地球に成立している多様な生態系の仕組みを地域ごと(アフリカの砂漠とかサバンナとか)に解説し、再びシステムとしての生態系に関わる項目(動物、植物、海洋、湖沼、リン循環、水収支など)にもどって、中学生でも分かるように平易に説明しています(絵がカワイイ)。
英語なので、生態系に関わる研究をするかもしれない日本人学生が、将来、海外で会話するときに基本的ボキャブラリーで恥を欠かない為の利用もできます。
私は地理学で学位を取得しました。気候学や土壌学など陸上生態系を体系化する基礎となる概念から、陸水学などの水圏生態系も、地理学の必須科目として修得しました。今の生態学は(日本だけかもしれませんが)、生態系ではなく、特定の生物群のみ扱っている気がします。たとえば植物生態学者で動物にも詳しい方はごくわずかしか知りません。なので、植物生態学者が「保全」と叫んで事業をさせると、その場所の二枚貝が全滅してしまっても調査すらしていないので、「順応的管理により順調に事業が行われた」と、しゃぁしゃぁと報告します(霞ヶ浦のアサザ保全事業の例です)。

真に生態「系」を理解するのに必要なのは生態学ではなく、生態系地理学とも呼ぶべき地理学です(地理とは、対象とする「地」を構成する全ての要素のことわり(理)を解明する学問です)。

この本では各地の生態系の解説で必ず、人間がどのように関わって来たか、今後どう関わるべきかを解説しています。人間も生態系を構成する重要な要素だからです。こういった点がまさに、私が構想している「生態系地理学」の方向を示しているように思いました。

 

The Wondrous Workings of Planet Earth: Understanding Our World and Its Ecosystems

The Wondrous Workings of Planet Earth: Understanding Our World and Its Ecosystems