宍道湖でシオグサ補食候補が激減!

東大学部生のフィールドワーク引率がてら、宍道湖のフナムシ調査を行いました。1996年当時、島根大学の学生だった方が詳細な分布調査をされていました。その方から正確な調査地点情報をいただき、1996年当時に「うじゃうじゃいた」地点を回ってみました。

ほとんど、いませんでした。

いなくなった一つの原因は、地元の某生態学者が「宍道湖岸には、かつては水ヨシが生えていたのに、護岸工事によって無くなった」との事実無根のウソを言い立て、国交省に浅場造成とヨシ植栽をさせたことです。波が高い大湖沼である宍道湖ではヨシを植えても定着しないので、国交省は浅場の前に潜堤を造成しました。その結果、湖岸に樹木が生えるという不自然な浜と(海岸にこんな浜があれば、おかしいでしょう?)、波が弱いために水草が大繁茂、非常にきたならしく、フナムシが住めなくなっていた浜が5分の1ありました。

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一方で、かつてのコンクリート護岸がそのまま残っているのに、小さなフナムシばかりで3cm以上の成虫がいない浜がほとんどでした。また小さなフナムシたちも、本来はごちそうのはずの植物枯死体にたかっていませんでした。少なくとも1990年代始めまでは、こんなゴミがあったら、フナムシが真っ黒にたかっていました。

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宍道湖で沈水植物の水草が増えたのは、除草剤を減らしたからです。しかし底生緑藻のシオグサは1950年代から現在に至るまで常に宍道湖に生えていましたので、除草剤の影響は維管束植物の水草ほどシビアではなかったと思われます。ではなぜ近年になって大繁茂するようになったのか。

私達は除草剤使用以前の各地の湖沼の植物繁茂状態をインタビューして出版しています(末尾の本です)。それによりますと、かつて水草は肥料用に根こそぎに近い状態で刈り取られていましたが、その頃に現在ほど、宍道湖や琵琶湖で底生緑藻や付着緑藻もあったとの証言はでてきませんでした。
つまり現在起こっていることは、過去にはなかった何らかの原因によると考えるのが自然です。そしてそれは、補食者として有力なフナムシが激減していることから、増える側ではなく減らす側の要因を考えるべきと思われます。おそらく、日本の生態学者の大部分が苦手とする化学物質が原因なので、生態学者からは、この問題を解決する知恵はでてこないことでしょう。

 

里湖(さとうみ)モク採り物語―50年前の水面下の世界

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