学生支援にみる日本の科学技術の将来

東京大学は財政的に比較的恵まれていると思われていますが、学生支援の実態はお寒いものです。
欧米の大学では博士課程は授業料をとらなかったり、実質ゼロになる仕組みが用意されている場合が多いですが、東大の場合はしっかり取ります。
全額免除、半額免除の申請もできますが、親の年収で査定されます。いろいろ算定方法があって、ザックリいくらまでなら免除になるとの目安はないそうです。ただし留学生の場合、出身国にいる親の年収を調べる手段がないので、留学生単独の独立世帯と見なされます。日本人だと親元を離れていても親と同一世帯とみなされることから、不利になりがちです。
また、これまで東大はTA制度(下記、注参照)で学生を支援してきましたが、今後は何らかの具体的なジョブを大学で行った見返りとして支払う制度に変えるとの方針を出しています。
このように留学生と比べて日本人学生には相対的に支援が少ないくなると、家庭が裕福でない優秀な日本人学生さんは、海外への留学を選択すると思われます。特に実験などでアルバイトする時間がとれない理工系でこの傾向が強まりそうです。
私は学生さんへの支援を担当する委員をしているのですが、こういった話を聞く度に、日本の科学技術はますます空洞化するような気がしてなりません。

注:TAとは、優秀な大学院学生に対し教育的配慮の下に、学部学生等に対するチュータリング(助言)や実験、演習等の教育補助業務を行わせ、大学教育の充実と大学院学生のトレーニングの機会提供を図るとともに、これに対する手当ての支給により、大学院学生の処遇の改善の一助とすることを目的とした制度。