水道水がおいしいはずないでしょ

一部自治体が水道水をペットボトルにつめて、そのおいしさを宣伝していますが、おいしいはずないと私は思います。
水道水は法律で、「給水栓(蛇口)における水が遊離残留塩素を0.1mg/L以上保持するように塩素消毒をすること。」とされています。「以上」としかないので、原水の有機物が高いと判断したときには、かなりの濃度を入れます。私は講義で毎年、都内某所の水道水の残留塩素濃度を学生に測定してもらっていますが、ある年には0.4mg/Lにもなってました。この塩素臭だけでも、おいしいはずはありません。
これに対してヨーロッパでは、水道水を飲む習慣はまずありません。飲用水にはミネラルウオーターを購入していますが、そのミネラルウオーターはCODEX STANDARD FOR NATURAL MINERAL WATERS CODEX STAN. 108-1981により、
・いかなる汚染、又は外部からの影響をも避けるために、可能なあらゆる予防手段をとらなければならないものであること。
・本規格で、認可されている処理以外のいかなる処理も受けていないこと。
と定義されています。つまり殺菌してはいけないのです。下の写真は私がミネラルウオーターを買いに行くお店で表示されていたものですが、「無殺菌」と明記されています。

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なお、世界の中でも、塩素消毒して水道水を飲めるようにしている先進国は日本を含め5カ国もありません(たとえば国土交通省平成16 年版「日本の水資源」に図があります)。無駄(洗濯やトイレの水が塩素消毒されている必要は無い)、かつ環境に悪い(塩素添加された水が大量に流され続けるわけですから)ことをするのは愚かだからでしょう。
ましてや、日本の水道水の多くが川や湖の水を処理して供給しています。川や湖には工場排水も農業排水も流れ込みます。特に水田から流れ混む水は誰も何が入っているが測定しないで流れて来ますから、農薬がそのまま水道水に混じる事態になっています。
たとえば新潟県でガンの発生が特異的に多いとして疫学調査された結果、除草剤CNP(コンタミとして猛毒のDNAが入っていた)が原因とされ、使用禁止になりました。禁止になるまでは、田植え期には取水先である信濃川と同定度の濃度で水道水に含まれていました(山本正治、日本農村医学会雑誌、vol.44, No.6, pp.795-803, 1996)。
私が工業技術院地質調査所に就職したとき、上司から「化学職の人が霞ヶ浦の研究で水質を測ったら、決して水道水を飲まなくなる」と言われました。どうしてだろうと測って、理由が分かりました。原因は霞ヶ浦固有ではありません(塩素消毒、表流水使用)。以来私は、日本の水道水は決して飲まなくなりました。料理にも使いません。子供の頃は病気のデパート状態だった私が、30歳過ぎてから事故以外はどんどん健康になっていくのは、水道水を飲まないことも原因だろうと思っています。