楽天はAmazonにどう張り合うか?

「楽天市場」を運営する楽天が、一定額以上を購入した場合の送料を無料にする料金体系にするよう出店者に求めていることについて、公正取引委員会が独占禁止法に基づく緊急停止命令を東京地方裁判所に申し立てました。公正取引委員会が緊急停止命令を申し立てたのは16年ぶりだそうです。

楽天送料問題 公取委 16年ぶりの「緊急停止命令申立て」 | NHKニュース

世界でGAFAが席巻する中、楽天は頑張っていると思います。今回の送料問題もAmazonへの対抗策としています。
楽天はショッピングだけでなく、旅行、銀行、証券、オークション、保険など様々な事業を展開し、その全てに楽天ポイントを付与しています。これほど広範囲に共通ポイントが使えるのは楽天だけなので、消費者としてありがたいと思います。
しかし楽天は、実は縦割りが非常に進んでいます。たとえば楽天カードを楽天銀行で作ると、デビッドカードとクレジットカードが選択できます。つまりどちらも「楽天カード」です。そして楽天市場では「楽天カードで支払うとスーパーポイントが増える」と書かれていますが、これはクレジットカードだけで、デビッド機能の楽天カードだとメリットはありません。さらには楽天ペイに登録することもできません。
「そうなんですか?おたくのホームページでは、全く説明書かれてませんよね。」と楽天銀行に聞いても、わかりません、市場の方で聞いて下さい、ペイの方で聞いて下さい、という回答でした。
楽天証券は扱える米国株式がネット証券では最多レベルであることを売りにしています。一方、楽天銀行は外貨預金がありますし、海外の銀行への外貨送金もやっています。
さらには、楽天銀行からボタン操作ひとつで楽天証券に資金を移せます。普通に考えれば、「楽天証券の米ドル株で得た配当や売却益は、楽天銀行の外貨口座に移して、貯めるか送金に使おう。」と思うでしょう。
ところが驚くことに、楽天証券から楽天銀行に、外貨は一切、送れません。楽天銀行から外貨を送れるのはSMBC信託銀行のみ、しかも手数料がかかります。
「なぜですか?円貨は往復できるのに?」と楽天銀行に問い合わせても、「楽天証券の事情で。。」との回答。
楽天のさまざまな業務の中で銀行業務は仲介することが多いですから、こういった問い合わせ・クレームは、楽天グループの中でも楽天銀行に集中しているのではないかと、気の毒になってきます。
楽天はもしかしたら、独裁ワンマンによりガリバー化しつつあるのかもしれません。組織が大きく、広くなる際に、官僚組織のように縦割り・硬直化し、そこでトップが独断的だったら、今回のコロナウイルスの政府対応に見られるように、脆弱でムダが多くなります。
楽天をここまで大きくしたトップが、まだ組織が小さかった頃のように、いかに有機的に異なった部隊をつないでいくかを思い起こしてくれたら、少なくとも日本では強行的なことをしなくても、Amazonにまけない競争力を得られるのではないでしょうか。楽天市場でAmazonに比べて多少負けていても、楽天グループ全体のサービスを通じて楽天ファンが日本を席巻すれば、グループとしては勝ちではないかと思うのです。