テナガエビのネオニコチノイド感受性を調べる実験、感受性が一番高いのは孵化直後のはずですが、餌をやらないとネオニコ以前に餓死してしまうので文献検索したところ、汽水産と淡水産のテナガエビの幼生にアルテミア(ブラインシュリンプ)のノウプリウス幼生を餌として与えたとの既報がありました。これにならおうとペットショップでアルテミア卵を買ってきました。
その論文は「アルテミアは淡水中では死亡するので、過去の実験で淡水産テナガエビ幼生が淡水で生残率が低かったのは餌が死んだ為である可能性がある。そこで給餌頻度がテナガエビ幼生の生残に与える影響を調べる。」という趣旨でした。なのでアルテミアは淡水ではすぐに死ぬことは理解していました。
しかし、アルテミア卵の取説を読んで絶句!500mlの水に塩10gいれて孵化させるとありました。これは水100gに対して2gの塩をいれることになります。海水は100gに対して約3.4gの塩が入っているので、2gの塩をいれて育てた餌は、かなり海水に近い汽水のエビにはよくても、淡水のエビに与える餌としては全く不適当です(こんな塩辛いもの、口にできる?)。せめて100gの水に0.5g程度の塩分かと思っていました(それでも宍道湖の通常の塩分より高いです)。
文献を遡ると、1971年の宍道湖産テナガエビ飼育実験報告でもテナガエビ幼生の餌にアルテミアのノウプリウス幼生を使っていて、おそらく最初に誰かがそれを使ったから、延々踏襲されてきたんじゃないかと思います。
どうしたものかとペットショップに行ったら、冷凍ワムシが売られてました。海産魚にも淡水魚にもOKとあったので、ひとまずこれを購入しました。その店には「塩抜きブラインシュリンプ・ふ化後12時間以内」という製品も冷凍で売られていました。ワムシでダメならこちらが使えそう。私が子供の頃に熱帯魚を飼っていたときには、こんな気の利いた餌はありませんでした。今の熱帯魚は恵まれていますね。
帰宅すると師匠から、エビの様子はどうかとSMSが入ってました。これ幸いに、
「実はお腹の卵が赤くなってて、もしや死産かとやきもきしてます。」と電話しところ、それは間もなく幼生がでてくる予兆とのこと。慌てて親をビーカーに隔離したところ、その夜に、幼生なのかゴミなのかわからないものが漂ってました。普通の動物プランクトンなら肉眼でそれと分かるので、テナガエビのゾエア幼生はこぶりなのかもしれません。念のためワムシを少しあげました。
今日もまだ親の腹に赤い部分が少し残っているので、この親はまだしばらくビーカー暮らしです。赤い部分が完全に無くなったらもとの水槽に戻してあげようと思います。
当初予定していた曝露実験は、ゴミなのかエビなのかわからないものをいちいちピペットで吸って個別のビーカーで実験するのは、あまり現実的ではない気がしてきました。せめて5mmくらいに育ってからにするか、今年度は親エビで行おうかと考え始めています。