有明海でアサリを増やすために鶏糞をまいているとの情報が入りました。NHKの報道は下記です。念のため、この材を作っている企業のホームページを確認したところ、実験室実験の結果は掲載されておらず、いきなり対策として使われたようです。
「鉄鋼スラグと鶏糞を独自の配合でブレンドし固形化させ、栄養分が一度に溶け出しにくく、プランクトンやバクテリアの持続的な増殖に効果が見込める」と書いてありましたが、二枚貝にとって重要な植物プランクトンは珪藻です。NHKのニュースでも窒素とリンは書かれていましたが、珪素が入っていないと、珪藻以外の植物プランクトン(赤潮を引き起こす渦鞭毛藻とか)を増殖させてしまう可能性があります。NHKの記事でも企業のホムペでも、これをまくことにより餌として有効な植物プランクトンが増えたかを検証している記載はありませんでした。
この企業は「独自に開発したバイオエキスを天然水苔に含浸させ、鉄鋼スラグとともに生分解性の不織布に入れ、底質改善箇所に設置し使用」するという製品もホムペで紹介していました。この記載だけだとEM団子を彷彿させるので、もう少し科学的根拠をきちんと書くべきだと思います。
かつて宍道湖でヤマトシジミが激減したことがありました。「植物プランクトン」は減るどころか、増えていました。原因は、シジミが食べれないラン藻が増え、餌となる珪藻が減っていたからでした。少なくともシジミ漁場では、鶏糞添加は効果がないと思われます。
地元の海を何とかしたいという熱意は大切ですが、生態系は一度バランスを崩すと元に戻すのに時間がかかったり、最悪、戻らなかったりします。アセスメントもせず順応的管理をかざして強行された霞ヶ浦でのアサザ植栽では、二枚貝が急減し、今もほとんどいません。やってみて何かあったら変更するという「順応的管理」は、手痛いしっぺ返しを受ける危険もあることを忘れてはならないと思います。