ブーメラン

西日本では今年、トビイロウンカが大発生して稲作に打撃を与えました。トビイロウンカは日本で使用されている代表的な殺虫剤であるネオニコチノイド系に耐性を持っているため、被害を防ぐ方法が限定されてしまうのです。

トビイロウンカは日本では寒すぎて越冬できませんが、中国南部から東南アジアでは周年生息でき、稲作が二期作、三期作と何度も行われ、そのたびに大量のネオニコチノイドが使われるため、2005年にはそれらの国でトビイロウンカがネオニコチノイド耐性を獲得したと考えられています。

陸水研に世界第三位の米生産国であるインドネシアからの留学生を迎えるにあたり、いったいどれくらいのネオニコ使用量で耐性をつけさせてしまったのか知りたいと、使用量統計を調べるよう指示しました。「いろいろ探したけど見当たらない」との返事。いつ使い始めたかも分からないし、それによって影響するかもしれないエビの生産量などのデータも10年分くらいしか記録されていないとのことでした。

仕方ないので来日の際に、持ち込みができる海水を採水してもらいネオニコチノイド濃度を測ってみました。海水で希釈されているにもかかわらず、イミダクロプリドというネオニコチノイドが多数の地点から検出されました。イミダクロプリドは2005年に耐性がついた最初のネオニコチノイドです。それを今も海水からも検出されるほど稲作に使っているという、理解に苦しむ状況であることがわかりました。

日本の化学メーカーもネオニコチノイドを作っているので、インドネシアで使われているネオニコチノイドの一部は日本製でしょう。そこで野放図に使われることで、被害を受けるのはインドネシアだけでなく、当の日本の稲作です。こんなことをしていてどこが環境先進国なんだと思います。