雨が降るとギンザケが大量死するのはタイヤからの化学物質が原因か?

12月21日記事でScience掲載論文を紹介した記事をお伝えしました。その記事のリンク切れてましたが、下記など、複数で今も紹介されていました。

先日紹介した記事では、米国ワシントン州で「雨が降ると河川のギンザケが大量死する」原因を20年かけて調べた結果、タイヤの劣化防止剤として使われる6PPDという物質が道路にぶつかるとオゾンガスと反応して6PPD-キノンが発生し、これが流入するとギンザケが酸欠のような症状で死亡するとの説にたどりついた、と記していました。
年末年始の仕事が終わり、ようやく元論文を読めました。
元論文には、いつからこの大量死が起こるようになったか明記されていませんでした。引用している文献で最も早かったのは1990年代後半から起こっているとしたものでした。

http://wildfishconservancy.org/what-we-do/science/research-and-monitoring/ongoing-projects/SprombergScholzIEAM2011prespawnmortincoho.pdf

タイヤの劣化防止に6PPDを使うようになったのは、日本では1990年以前です(1990年の論文で、様々な劣化防止剤を紹介していました)。もしタイヤから発生する6PPDが原因だとしたら、なぜ1990年代初めから大量死が発生しなかったのか、また同様に6PPDを使っている日本などで同様の大量死が報告されていないのはなぜなのか、不思議に思いました。
また6PPDキノンが原因であれば、他の動物が大量死しないのはなぜなのかもわかりませんでした。
道路にはタイヤ屑だけでなく標識などに使われている亜鉛など、様々な化学物質が蓄積し、降雨時に河川に流入します。その生態系に与える影響に関する研究はもっと行われるべきだと思いますが、この報告が鮭大量死原因の決定打とは、私には思えませんでした。