キンランはなぜ減った?

Wikipediaによると、キンランは1990年代ころから急激に数を減らし、1997年に絶滅危惧II類になったそうです。キンランは菌根菌から炭素源の30~40%、窒素源の50%を供給されているため、その菌根菌が安定して生育していないと(つまり菌根菌が寄生する樹木がないと)、いつかは消えてしまいます。
ところがつくばでは、どう見ても菌根菌がいそうにない、コンクリートやアスファルトの近くのカチカチ土壌からキンランが出てくるところが数カ所あります。下の写真にはキンランが3株います。ここは昨年も出ているのを見たので、安定して出ているようです。

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面白いことに菌根菌から窒素源の90%以上を得ているギンランは見たことがありません。想像ですが、キンランは自力でもある程度炭素や窒素を得られるので、菌根菌が少なくてもやっていけるのではないでしょうか。
ではなぜ1990年代頃から急激に数を減らしたのでしょう。
菌根菌が依存する樹木が急激に減ったとは考えにくいです。キンランは異花受粉のみ行うので(田中、1965)、昆虫の減少が原因かもしれません。だとしたら、1993年にネオニコチノイドが使用開始されたことが効いているのかもしれません。キンランは、かつては林で普通にみられたそうですが、松がある林ではネオニコチノイドが空中散布されています。
ランミモグリバエによる食害の影響を指摘する報告もありますが、そのハエが1990年代から増え始めたのかどうかが鍵になりそうです。