魚が減るのは温暖化のせい?

湖沼における地球温暖化に関していろいろ調べていたところ、環境省が今年になって公表した「気候変動による湖沼の水環境への影響評価・適応策検討に係る手引き」に行き当たりました。

環境省_気候変動による湖沼の水環境への影響評価・適応策検討に係る手引き

かなりの量の資料を読み進めていて、「はぁ?」と思ったのが「【資料編1-2】気候変動による湖沼の水環境への影響評価・適応策検討に係る手引き」の1-125ページ。

https://www.env.go.jp/water/siryouhen_kikouhendoueikyohyoukatebiki1-2.pdf

「ワカサギについて、1990年頃に漁獲量が激減。漁協によるワカサギのふ化放流が行われているが、近年の漁獲はない状況。ワカサギは水温が30度を超えると生存が難しく、自然分布の南限が宍道湖付近であったこともあり、水温が高い時期が出てきたことで宍道湖での生息数が減少したと言われている。」
いったい誰がそんなこと言ってるのですか?
宍道湖は日本海側の南限であって、太平洋側は霞ヶ浦です。霞ヶ浦で水温が高くなったために減ったという話は聞きません。
さらには、下記は2019年にScience誌に投稿した論文に掲載した図を日本語にしたものです。1993年以降、急に温暖化が進んだとでも言いたいのでしょうか?

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そういえば、ネオニコチノイドの影響で宍道湖でのワカサギ・ウナギ漁獲量が減ったとするこの論文が出たときに、環境省が「農薬の環境影響評価ではミジンコやユスリカも対象に調べている。今回の調査は長期的影響が出る濃度について根拠を示していない。」と反論したことを思い出しました(2019年12月18日毎日新聞)。
環境省にとっては、農薬の影響が疑われたら温暖化を口実にできるという、ありがたい状況になったというわけなのでしょう。