「宍道湖でワカサギが減ったままなのは地球温暖化が原因」というデマ

「1993年以来宍道湖でワカサギが激減したままなのはネオニコチノイド使用により餌となる動物プランクトンが減ったため」との私の研究も含む「報道特集 ネオニコ系農薬 人への影響は?」、YouTubeは既に2万回近く再生されています。この手の番組としては大きな反響です。

一方で、「ネオニコを規制しても別の殺虫剤を使うトレードオフが起こるだけ」との反論も流布しているようです。どうしてそういう発想になるのか理解できません。既存の化学農薬は人にも有害で、ネオニコは人には無害とのふれこみで広く使われるようになりました。それが人にも有害である可能性が出てきた時点で使用はやめるべきですし、「他に使う物がないから」と以前の人に有害なものを使うセンスこそがおかしいと思います。
で、私の説に対しては、「ワカサギが減ったのは温暖化で水温が上がったため」と地元でも思い込んでいる人が多いようです。では同じように高水温に弱いシラウオが減っていないのはなぜですか?
下記地元水産試験場の報告ではシラウオも夏場の高水温に弱いこと、ワカサギが減ったのは高水温だけでは説明できないことが書かれています。

https://www.pref.shimane.lg.jp/industry/suisan/shinkou/suigi/publish/jigyouhou/2001/naisuimen.data/01-3-a.pdf

宍道湖はワカサギの自然分布の日本海側の南限で、高水温リスクが高いのは事実です。では太平洋側の南限はどうでしょう?それは霞ヶ浦ですが、霞ヶ浦では冬になる前にまるまる太ったワカサギが漁獲され、「夏ワカ」として売り出されています。その霞ヶ浦の水温上昇度は、宍道湖の約2倍です。出典は下記です。

https://www.env.go.jp/water/honpen_kikouhenndoueikyohyoukatebiki.pdf

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とはいえ上記グラフのデータは主に湖心の水温で、地元水産試験場のようにワカサギが立ち寄る湖岸域ではありません。そこで今年の8月、霞ヶ浦の複数の湖岸域で水温の連続観測を行いました。想像していたとおりの結果になり、OBや学生さんが論文化しているところです。これで「ワカサギ壊滅原因水温上昇説」は消えてなくなることでしょう。