日本の水道水は安全?

水道水に混入する農薬の水質基準は、内閣府食品安全委員会が設定したADIを用いて、1日2リットル摂取、体重50kg、割当率10%として算出するそうです。ADIは「許容一日摂取量」で、ある物質について、人が生涯その物質を毎日摂取し続けたとしても、健康への悪影響がないと推定される1日当たりの摂取量です。
このため日本の水道水では、農薬毎に水質基準値の濃度が異なります。一方、EUでは飲用水中の全ての農薬濃度が、0.1μg/L未満であることを義務づけています。日本の水道水から検出される農薬のかなり多くが0.1μg/Lを超えますが、日本の基準はそれより甘いので、水道水として供給され続けています。
過去には除草剤のCNPが胆嚢癌の原因であることが分かり、農薬登録から失効しました。失効前の水道水のCNP水質基準は5μg/Lでした。失効になってから0.1μg/Lに引き下げられました。
これは何を意味しているのでしょう?
ADIを元に計算された基準値が、必ずしも安全ではないということです。そして発癌性が明かな物質でも、0.1μg/L未満であれば大丈夫そうだということです。
それならなぜEUのように、被害が出る前に全ての農薬の基準値を0.1μg/L未満にしないのでしょう?
CNPで被害者を出しておいて、未だに「ADIを基に計算したものだから安全」とうそぶく厚労省の論理は、破綻していると思います。


(追伸)
当研究室の調査で、ネオニコチノイドの1種であるジノテフランが約1μg/Lも混入していた水道水(それでも日本の水質基準にはひっかからない)が出現、これは他の農薬も複数種混ざっているのではないかと外注に出したら案の定だったので、この記事を書きました。
仮に個々の農薬がADIから計算した基準値内に収まっていたとしても、複合したら毒性が強くなったり、農薬原体ではなく溶剤に原因物質があることは十分あり得ます。EUが一律0.1μg/L未満にしているのは、これくらい厳しくしておけば複合影響の危険も甚大にはならないだろうとか、原体が0.1μg/L未満であれば溶剤の濃度も薄まっているだろうとか、そういった配慮からではないでしょうか。