有機農業は勧めません

以前にTBS報道特集が放映された頃は、有機農業=農薬を使わない農業と思っていました。その後、国が定義した有機農業は「化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと並びに遺伝子組換え技術を利用しないことを基本」と「基本」なので多少外れてもよいというニュアンスを残していて、有機農産物についても「化学的に合成された肥料及び農薬の使用を避けることを基本」としていることに気づきました。

https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/yuuki/attach/pdf/index-37.pdf

実際、「有機JAS規格」では特定の農薬使用が認められ、「有機野菜は無農薬野菜ではない。」としています(例えば下記。他にも「有機栽培 無農薬栽培」で検索したら同様の解説がぞろぞろ出てきます)。

農水省のホムペでは見つけることができなかったので、下記で有機JAS規格で使える農薬を確認しました。

有機表示のできる農薬

例えばミルベメクチンやスピノサドは害虫以外にも影響を及ぼします。

Milbemectin (Ref: SL 8601)

Spinosad (Ref: XDE 105)

国の定義では、有機農業では化学的に合成された肥料を使ってはなりません。高度なリサイクル社会だった江戸時代、人の糞尿は肥料に利用されていました。今日では衛生的観点から使用されない糞尿ですが、「石油より先にリン資源が枯渇する」と地学関係者の多くが知っている現実を前に、下水処理場でリンを化学的に抽出する試みが行われてきました。昨今の化学肥料の高騰でようやくマスコミに報道されるようになりました。

物質循環の観点からは、下水処理場から肥料として窒素やリンを取り出すことはサステナビリティに大きく貢献するものです。しかし現在の有機農業の定義では、下水処理場産リン肥料は使えません。馬鹿げています。
有機農業ではなく「無農薬農業」を目指すべきだと思います。