火曜日のコースゼミは修士2年のポスター発表でした。高知県の海岸について「ここでは動物の巣穴から過去の海面が分かっていて。。」と書かれていたポスターがあり、「巣穴ってどんな動物のですか?」と尋ねたら予想通りヤッコカンザシでした。
「ヤッコカンザシは巣穴に住むのではなく、管状の石灰質の殻を作って住むので、『巣穴』ではないと思いますよ。」
またヤッコカンザシ密集帯の下限はばらつくけど上限は平均海面付近に揃うことも伝えました。
「ヤッコカンザシ」でググるとトップページに、地学関係のサイトがかなりあることが分かります。ヤッコカンザシが岩礁海岸での古海面推定に使えることを報告したのが下記論文で、37年前の発表です。私は水関係だけでなく先カンブリアの岩石や過去数千年のロシア湖沼の堆積物などを使った古環境の論文もいくつか書いていますが、今後も日本の地学に貢献するという点では、この論文が一番だと思います。
この論文で使っているのは「巣穴」ではなく「棲管」という単語で、「ヤッコカンザシ」でググッて出てくる生物系サイトでも「棲管」という用語を使っています。多毛類の同定をやっていた私には全く違和感がない言葉なのですが、動物にあまり縁が無い地学系の学生さんは恐らく「棲管」という言葉を聞いたことが無くて、「巣穴」という言葉を使ってしまったのだと思います。
翌日の水曜日には、当時学部生でヤッコカンザシの調査を手伝ってくれた○○さんが隣の部屋の地理学教室同期の教授に会いに来て、私の部屋にも立ち寄ってくれました。前日にヤッコカンザシについて学生さんに説明したばかりだったので、とても不思議な気がしました。40数年ぶりの再会でした。