残念なNHK「宙わたる教室」

NHKの「宙わたる教室」の1,2回を見て、これは面白い!と原作を購入、11月2日に読了し感激ひとしおでした。
かたやドラマでは、主人公の藤竹が助教をしていたときの上司だった「石神教授」という女性が出てきてから、原作にはないストーリーが目立ってきました。
この石神教授、「国の科学政策振興委員の委員長を務めており、JAXAなど科学振興に関する予算配分に絶大な権限を持つ。」と設定されています。今の日本の宇宙開発分野で、一人の女性にそのような権限が集中するなんて、あり得ません。
2022年に行われた東京新聞のアンケート調査では、今でも女性よりも男性の方が優秀との無意識の偏見があることが分かります。

日本に限らず世界でも、たとえば理工系のノーベル賞受賞者に女性がわずかしかいないのは、女性であるがために不当に扱われることも一因です。

「宙わたる教室」の原作では藤竹が、務めていた研究室の教授が、研究に尽力した高専生を論文の共著にしなかったことに反発し、助教の職を退きアメリカに行きます(原作では教授の名前も性別も書かれていません)。そこでアメリカ先住民の学生を研究者が「同僚」と紹介して、カルチャーショックを受けます。同じようなことが日本でできないかと考え、定時制高校で実験することにしたのです。
こういった流れからすると、研究を続けるだけでも困難が多い日本の女性研究者の現状を無視して女性教授を悪役にしたこのNHKドラマは、極めてミスリーディングだと思います。
昨夜の第8話を見て、これ以上ドラマを見ると原作の印象も下がりそうなので、もう見ないことに決めました。ドラマを見る人が理系の女性の現状について誤解を抱かないよう、祈るばかりです。