USGSは商売上手

Oxygen isotopes in nitrate: new reference materials for 18O:17O:16O measurements and observations on nitrate-water equilibration (Rapid Commun. Mass Spectrom. 2003; 17: 1835–1846) は、この論文で記載する方法で同位体を測るときには、自分たち(著者は米国地質調査所、USGS)が作った標準試薬を使うように誘導しています(末尾にあるAPPENDIX参照)。
APPENDIXにある機関から2種類の標準試薬を購入するといくらになるか調べてみました。
IAEAはホームページに詳細に記載があって、それによれば、1ユーロ169円に為替手数料いれて180円とすれば、1種類130ユーロだったので23400円、合計46800円(いずれも0.5g)。
NISTは送料・手数料が書かれていなかったので見積もりをお願いしたところ、0.9g入りが254ドル、FEDEXが55ドルかかって、計563ドル。1ドル106円に為替手数料をいれて120円とすれば、計59678円。これを0.5g当たりにすると約33154円。いっぺんにたくさん購入できるし、IAEAより割安。

USGSが直接売買していなくても、他にもNIST経由で種々の標準試薬を販売しているようで、最終的にはUSGSにとってかなりの収入になっていそうです。これを使わないと論文書けないよ、みたいな雰囲気にして買わせるって商売うまいなあ、と大阪人としては癪にさわります。
それよりも、こういうのが重なって、USのスタンダードが世界スタンダードみたいになってしまうといやだなあと思います
もちろん、こういう地道な研究があって、標準試薬があるからこそ、自然科学の議論が成り立つわけですけど。

APPENDIX 1
Availability of reference materials
The new nitrate isotope reference materials are intended
for distribution in small aliquots (0.5–1.0 g for USGS34 and 1.0–1.5 g for USGS35) by the following suppliers:
International Atomic Energy Agency (IAEA), Isotope
Hydrology Laboratory, Wagramerstrasse 5, P.O. Box 100,
A-1400 Vienna, Austria.49
US National Institute of Standards and Technology (NIST),
Standard Reference Materials Program, Room 204, Building
202, Gaithersburg, MA 20899-6689, USA.50
At NIST, USGS34 has catalog number RM8568 and USGS35
has catalog number RM8569.

追伸:
国際誌=英語、という英語帝国主義も相当危ういと思っています。日本によくある学位取得条件の「最低1本は英文誌」って、例えばアメリカで「最低1本はスペイン語」なんてあり得ないわけで。
語学の能力と自然科学の能力は必ずしも一致するわけではありません。なので学生には、たとえ就職するにしても理工系だと英語は避けて通れないからゼミでは1回の文献発表あたり国際誌3本を義務づけるけど、書く方は英語で書くことよりも、合理的な文章を日本語でまず書けることが大切、と指導しています。
財力さえあれば、プロに翻訳してもらって、国際誌にだって投稿できるわけですから。