8月16日付記事で、霞ヶ浦に流入する水路にアサザが咲いていたことを報告しました。霞ヶ浦には多くの流入河川が入ってきますから、たまたまアサザの種が入ってきて堆積物に残ることもあるでしょうし、切れ藻状態で入ったものが一時的に群落を作ることもあるでしょう。だからといって波が高い霞ヶ浦の砂浜に常時アサザが群落があるのが「自然な状態である」なんてことにはならないのは当たり前のことです(宍道湖の堆積物には陸上植物の種がありますが、だから宍道湖に陸上植物を植えろ!ということにはなりません)。いまだ小学生にアサザを植えさせている団体はいいかげん、自分たちが非科学的な根拠で、湖岸環境を攪乱していることを自覚すべきでしょう。
一方で、流域から流れて来たアサザを多様性の観点から人工的に系統保存することには意義があると思います(同時に標本も作っておくことは、言うまでもありません)。
霞ヶ浦で発見されたアサザについては、公共機関の方がサイドワークで系統保存されていますが、株を植え継ぐのは大変な作業で、見たところ一部は絶えようとしていました。それで種子で保存してはと思いつき、一昨年とった種を冷凍にしています。来年あたり発芽試験をしてみようと思っています。
野生植物の現状に詳しい知人に尋ねたところ、アサザについては種子の保存法などは未だ検討されていないとのことでした。あんなに絶滅から守れ!と煽動し数十億円以上かけて消波堤まで造らせておいて、某保全生態学者のこういった基礎的なところ(本当に霞ヶ浦でしか種子繁殖しないのかという点も含め)に対するいい加減さについては、科学者としていかがなものかという気がします。