2014年の課題

2006年、「ポジティブリスト制度」施行により食品中の残留農薬規制が厳しくなり、除草剤使用量が減少。その上、流入水のN:P比が中国からの越境大気リンによって減少。結果、宍道湖は沈水植物に覆われ、同時にN:P比の減少に強いアオコが発生するようになりました。
このままではシジミが激減し、宍道湖はアオコの湖になります。それを防ぐには塩分を8PSU程度に保つべきと主張してきたところ、2013年は高い塩分で推移し、アオコが消えシジミが増えました。アオコの代わりにシジミの餌となる珪藻が優占し、シジミの濾過作用で透明度が増しました。
これらの結果はSchefferのAlternative steady state仮説を否定するものです。もともとNatureに掲載されたSchefferの論文は、水草が消えて濁度が増す原因リストの筆頭に除草剤を挙げていながらその影響については全く検討していないという、不完全な内容でした。
一方、汽水湖の環境は宍道湖で明らかなように、塩分で大きく変わります。ゆえに汽水湖では、人と湖がそれまで培ってきた関係を持続できる塩分を環境目標にすべきで、今年はその実現を目指したいと思っています。

上記以外に2014年に私が主体になって取り組む課題は下記です。
宍道湖水質の長期変遷とその原因
宍道湖ヤマトシジミ資源量と環境との関係
・最適化曝気装置
手賀沼に繁茂する水草の有効利用法
霞ヶ浦周辺のアサザ開花時期
・アジアのラグーン研究ネットワーク構築を見据えた日本での拠点作り

余裕があったら下記も取り組みたいと考えています。
ポジティブリスト制度以降、全国の湖沼で水草植物プランクトンの繁茂状況がどう変わったかデータ整理
霞ヶ浦での二枚貝生息状況の確認(ほぼ全滅状態がまだ続いているか)
安定同位体比によるPhosphateの起源推定
・義務教育における科学的に間違った水環境教育の是正
・シオグサ対策

最近は物議を醸しそうな和文以外は筆頭で投稿する機会がほとんど無くなりましたが、国際誌筆頭2本は投稿したいところです。2013年は共著を含め年間10本印刷は達成できませんでしたが、現在印刷待ちが既に4本あるので、2014年は共著を含め年間15本印刷を目標とします。学生さんの貢献、期待しています(特に現在D2のK君とY君)!