ジュゴンのすむ海をめざして

生物研究社が出している「海洋と生物」219号には「特集Dugong dugon ージュゴンのすむ海をめざして」で下記6報告が掲載されています。ジュゴンの基本的知見、生態、生息範囲や個体数の現状など、ジュゴンに関する最新の知見がひととおりそろっています。ジュゴンに関心のある方には必見と思います。
ジュゴン入門 進化・分類・形態および保全対策
琉球列島とトレス海峡におけるジュゴン
・近代沖縄史料(統計・新聞)にみるジュゴン
・日本と東南アジアにおけるジュゴンの現状
ジュゴンの生態 生活史と食性について
ジュゴンの飼育と繁殖 人工飼育および繁殖の可能性について

補足として、上記報告の中で、「2002年には熊本県牛深市で定置網に混入した例があるが、これは偶発的な移動分散によるものと考えられる。」と書いてあるものの、根拠が書かれていません。このジュゴンが亜熱帯海域から移動してきたことは、下記の私の論文で議論しています。
Yamamuro, M., Aketa, K., and Uchida, S. (2004) Carbon and nitrogen stable isotope ratios of the tissues and gut contents of a dugong from the temperate coast of Japan. Mammal Study, 29 (2), 179-183
また同じ号の別の報告で、ジュゴンは窒素含有量が高いウミヒルモやウミジグサを優先的に食べるとの説が紹介されていますが、ウミヒルモを食べるのは窒素が高いからではなく、回復が早いからだと議論したのが下記論文です。
Yamamuro, M. and Chirapart, A. (2005) Quality of the seagrass Halophilla ovalis on a Thai intertidal flat as food for the dugong. Journal of Oceanography, 61 (1), 183-186
しばらくジュゴンに関する論文を書いていませんでした。本特集を読んで、そろそろまた何か新発見して、論文を書きたいと思いました。