NHK教育番組を検定しよう!

昨日紹介したNHK道徳ドキュメント「自然を再生する人の輪」には、小中学校での授業に用いることを想定した資料が用意されています。
例えばスライドショーには、消波堤の内側が植物で覆われている写真があります。霞ヶ浦ほど大きな湖沼は琵琶湖同様、砂浜湖岸が自然の状態です。このように水際まで植物が広がるのは、波を消すという操作をしたからです。
さらに「自然を再生する人の輪」指導案には「霞ヶ浦の10年前の写真と現在の写真を提示し、自然の再生はどのようにして進められたのか関心をもたせる。」とあります。10年前の写真には、堤防とコンクリート護岸だけが映っています。その頃、水面下には昔ながらの砂地が広がっていたので、イシガイなどの二枚貝がたくさんいました。しかし「自然再生事業」と称して造られた消波堤のため、波が弱められてヘドロ化し、二枚貝は全滅しました。この番組では二枚貝が死滅し、本来なかった植物に覆われた湖岸を「自然が再生した」としています。書いているのは霞ヶ浦がある茨城県ではなく、千葉県の方です。
小中学校で用いられる教科書や副読本は、専門家による検定を受けます。しかしNHKの教育番組は検定を受けません。そして検定を受けた教科書でも、関係者から誤りが指摘され、それが学術的に妥当な指摘であれば、誤った内容は修正されます(例えば「アサザは水質を浄化する」としていた副読本の内容は今年度修正されています。5月22日記事参照)。しかし唯我独尊のNHKは、番組で紹介した状態は自然再生ではないと指摘されても「一人一人がつながることで大きな力になるということを子どもたちに伝える趣旨だ」と答えるのみで、自然が破壊された姿を再生した状態だと伝え続けています。
NHKの教育番組は義務教育で利用され、またNHK自身もそれを見越して指導案などをアップしているのですから、本来は教科書や副読本のように専門家による検定を受けてから放映されるべきです。NHKには科学や環境に明るい部署もあるのですが、内部から間違いを改める機能は無さそうです。歴史や文化などについても、NHK教育番組にトンデモ説が紛れ込んでいないでしょうか。