まぼろしのガシャモク

今年の水草研究会は、三木博士のコレクションを保有する大阪市立自然史博物館で開催されます。主催者のご厚意で、前日にあたる今日、博物館の水草標本を閲覧させていただきました。
かねてからガシャモクの分布のおもしろさに関心があったので、とびとびに分布するガシャモクがどれくらい形態変異しているのか確認しました。今や福岡のお糸池にしか自生していないとされるガシャモク。80年前の標本が残っているからこそ、失われた自然の多様性がわかります(分類学という地道な学問なくして、保全生態などあり得ないと思います)。
印旛沼で1965年7月30日に採集されたガシャモクです。花がついています。

関東では印旛沼で同日の3標本が残っていますが、みな花がついていました。手賀沼では1928年7月14日に採集された6標本のうち3つに花がついていました。内波逆浦は1928年12月2日採集に採集された1標本に花がありました。
これに対し、琵琶湖の堅田では1928年5月13日3標本、8月18日1標本、9月1日2標本、1932年7月10日1標本、11月16日1標本が採集されていますが、花がついていたのは8月18日の1標本のみ。そして、琵琶湖のガシャモクの中でもこの花がついている標本だけは、ガシャモクにしては葉が細すぎる気がします(特に花の近く)。

普通は花があれば花のついたものを標本にするでしょうから、関東に対して琵琶湖のガシャモクは、花がつきにくかったのではないかと思いました。そうすると増え方も違っていたのかもしれません。まだまじめに文献読んでないので、琵琶湖は栄養生殖が主だけど他はそうでないとか、既に解明されているのか確認しないとと思いました。
因みに中国大陸のガシャモクもありました。北京のどこかのようです。1941年9月27日採集の2標本とも花はありません。関東や琵琶湖のガシャモク(8月を除く)と見た目、あまり変わりません。

なお、群馬県多々良沼のこの標本は、ガシャモクではないと思いました。明日、時間があればご専門の先生に確認しようと思います(明日は別件があって午後は中座するので、ちょっと厳しいかもしれないのですが)。

(追伸)8月21日
本日の水草研究会で、角野先生に上記をお尋ねしました。三木博士の水草標本は京都大学の博物館にも多く収蔵されており、多々良沼については京大博物館に確実にガシャモクと分類される標本があるそうです。また琵琶湖については、琵琶湖では花が少ないという論文はないと思うので、京都大学の標本には花付の標本があるのではないか、ということでした。お糸池の標本もあればみたいと思うので、いつか機会を見て京都大学のガシャモク標本も見に行きたいと思います。